J-REIT,賃料
(写真=PIXTA)

2016年1月29日に発表のあった日銀によるマイナス金利は、不動産マーケットにも大きな影響を与えている。発表当日、東証リート指数は、1700から1850まで一気に上昇した。

年初からの数カ月間、世界経済の先行きに対する警戒感が強まり世界的な株安と円高が進行した結果、多くの投信の運用成績が悪化した中で、国内外の不動産投資信託(REIT)型ファンドは安定的な値動きを示し、資金流入が継続している。

マイナス金利後に動いたREIT銘柄

ここでマイナス金利が決まる前日の1月28日と3月5日の間の上昇率を個別銘柄ごとに見てみよう。

特にオフィス系のREIT銘柄に注目してみると、ジャパンエクセレント投資法人 <8987> が23.5%、野村不動産マスターファンド投資法人 <3462> が19.5%、日本ビルファンド投資法人 <8951> が19.0%など、1カ月強の期間でかなりの上昇率を記録した。REIT全銘柄の配当利回りは足元で3.26%、一方長期金利がマイナス0.078%(ともに4月8日現在)。その差(スプレッド)が3%を超えた現状ではJ-REITの利回りはとても魅力だ。

このような好調なオフィスREITの投資口価格(株価に相当)の源泉は、オフィス賃料の上昇と空室率の低下にある。

①オフィス賃料単価の上昇

2015年前半までは新規物件取得がREITの増配原資になっていたが、現在は不動産価格が上昇して物件取得の競争も激しく、新規取得によって分配金を上げられるような状況ではなくなってきた。現在ではオフィス賃料単価の上昇が増配原資となり、REITの好調を演出している。

オフィス仲介大手の三鬼商事が4月7日に発表した、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスの平均募集賃料は前月比69円(0.4%)高い3.3平方メートルあたり1万7973円だった(3月末)。募集賃料の上昇は27カ月連続。新築ビルを中心に需要が底堅い傾向が見られた。

オフィス賃料は、実質賃料と相場賃料がある。実質賃料とは、賃貸人と賃借人が実際契約している賃料を指し、通常2‐3年は変わらない。一方、相場賃料は、日々刻々動いている不動産マーケットの賃料、すなわち時価(Fair Value)をいう。

一般的にJ-REITが保有している物件は2-3年契約がほとんどで、2013年末あたりの実質賃料は相場賃料よりも5%くらい高止まりしていた。現在は実質賃料より相場賃料の方が高い状況なので、改定時に賃料が上がる。事実、その転換点だった2015年前半から、J-REITが保有するオフィス物件の賃料が上がり始めている。実際に2015年後半に決算を迎えたJ-REITでは、賃料上昇がプラスに寄与して分配金が上がり、その傾向が2016年上半期からより顕著になってくることが予想される。

②下がる空室率

一方、同じく三鬼商事(東京都中央区)が発表した3月末の都心5区の空室率は、4.34%となり、一般に需給均衡の目安とされる5%を 8ヵ月連続で下回っている。また、2017年ごろまではオフィス供給が絞られた状況が続くので、空室率は3%台に突入する可能性もある。一般的にREITが保有するオフィスの平均空室率は、都心5区のそれよりも低いので、投資口価格に大きな影響を与えるであろう。

③金融政策がREITに与える影響

各国の金融政策に目を移すと、米国の利上げがJ-REIT市場に及ぼす影響は小さいと考える。REIT市場との連動性が高いのは自国の長期金利だ。ドルペッグ制の香港や通貨バスケット制を採用しているシンガポールなどは日本と違い、米国に追従して金利や為替も動くので米国の利上げがそのままREIT価格の下落要因になる。したがってアジアREIT市場のなかでとらえると、J-REITは相対的な投資妙味が増していると考えられている。

次に国内であるが、日銀は2015年12月の金融政策決定会合において、J-REITの各銘柄の買い入れ限度額を5%以内から10%以内に拡大した。J-REITの市場規模は約10兆円。そのうち買い入れ対象である投資適格のAA格以上は約8兆円を占めている。

つまり、5%のままでは買入金額を増やそうとしても現実的には難しかった。そこで銘柄毎の買入限度額を2倍である10%にしたこととで、現状の年間900億円のペースでJ-REITを買い続けてもあと4-5年は可能になる計算だ。今回の枠拡大は、現状の施策を継続可能にすることで追加緩和の余地をつくったということが言えるのだ。

今後の見通し

足元で進んでいる市況の改善を背景に、今後J-REIT保有物件の賃料の引き上げ交渉が実現することが予想される。これは、REIT価格にとっては当然プラスの要因になる。

また空室率も、来年2017年までは低い水準のまま進むことが予想される。ただし、2018年以降、特に2019年は23区でかなり大規模なオフィス供給が行われる予定なので、このタイミングでは投資家は注意が必要といえるだろう。

格付けの高い大型REITは日銀の買い入れ対象で、好需給を見込んだ買いが集まりやすい。運用難により買い手として存在感が大きくなるであろう地銀やゆうちょ銀行も、流動性の高い大型REITを選好するとみられ、今後も引き続き大型優位の展開が続きそうだ。J-REIT市場は、目先、円高や原油安など世界景気に対する先行き不透明感によっては値動きが大きくなる可能性もある。

しかし不動産市況は改善が継続しており、相対的な配当利回りの高さや、J-REITによる保有物件の賃料上昇に伴う配当金増加期待を背景に、引き続き上昇基調で推移する展開となろう。

マネーデザイン 代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。

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