今、世界の金融ビジネスを大きく揺るがす革命が進行しています。ITと金融が融合して新たな価値を創造する「フィンテック」、台頭するフィンテックベンチャーは、新技術を駆使して今までない斬新なサービスを提案しており、これらの新サービスは早くも一部の消費者や投資家に受け入れられ始めています。
実際に株式市場には大量の資金が流入しており、市場が大きく湧いています。このフィンテックの震源地こそが、ITの総本山である米国のシリコンバレーです。
米大手金融機関、JPモルガン・チェースのダイモンCEOは、「株主への手紙」の一節で「シリコンバレーがやって来る」と危機感を露わにしています。
フィンテックは、融資や決済などの主要な銀行業務において急速に存在感を増しており、融資の分野では消費者や中小企業向けにビッグデータを活用して数分で審査を完了させるサービスが登場しました。
また、決済の分野においても、強固なセキュリティー、リアルタイムに行う決済情報の処理能力の高さ、決済コストの安さは驚異的なものになっています。
現在、米国ではフィンテックベンチャーが次々と株式公開を果たしています。例えば、2014年末に上場した米レンディングクラブは、インターネットを通じて資金を借りたい事業家と資金を提供して利益を得たい投資家とを結びつけるサービスを提供し、同社の時価総額は一時、1兆円を超えました。
一方で、昨年株式公開をした米スクエアは、スマートフォンやタブレットのイヤホンジャックに500円玉程度の小型機器を装着することでクレジットカード決済を可能にしており、同社の時価総額も一時、5000億円を超えました。
さらに、資産運用の分野でもフィンテックによる大きな変化の兆候が出てきています。それが「ロボ・アドバイザー」と呼ばれているロボットが資産運用を指南するサービスで、日本でも広がりつつあります。
例えば、投資顧問会社「お金のデザイン」が独自開発したプログラムでは、8つ程度の質問に回答すると、国内外の株式や債券、原油や金までをも含む資産配分を提示し、世界中の6000近くのETFから30~40の推奨ファンドを選び出します。
こうして低コストでの運用が可能となった結果、米国ではロボ・アドバイザーを使用したサービスが急拡大しており、シリコンバレーに拠点を置くウェルスフロントは、運用資産残高が30億ドルを超えるまでに急成長しました。
日本企業も規制緩和で世界
先だって2月24日の株式市場では仮想通貨に関連する銘柄が急騰しました。これは、金融庁が仮想通貨を「貨幣」として認定するための法改正案を今国会に提出し成立を目指すという内容が伝わったからで、今後法改正を機に仮想通貨が健全に広がっていく可能性を予感させます。
仮想通貨による送金は銀行送金に比べ手数料がフィンテックを担うIT企業への出資が可能となる予定で、世界に通用する日本のフィンテック企業の登場も期待されます。関連銘柄は、楽天、GMOペイメントゲートウェイ、デジタルガレージ、メタップス、VOYAGEです。
従来からの金融産業は労働集約型であり、米銀大手のJPモルガン・チェースは約24万人、三菱UFJフイナンシャルグループは約10万8000人の従業員を抱え、店舗は駅前の好立地に位置し高コスト体質となっていますが、果たして人間の力で行うべき複雑な業務が一体どの程度存在しているのかは疑問です。
フィンテックは、インターネットの特性を最大限活用することで、低コストで利便性の高いサービスの提供を可能にします。このようにコストの優位性を最大限に生かすことにより、預金者にはより高い金利を提供し、融資を求める事業者にはより低い金利で融資を行うことが可能となります。
以上まで述べてきたように、このフィンテックが金融業界における産業革命となり、我々の生活全般を飛躍的に向上させて、新たな企業を創出して日本経済を活性化させていくことが期待されます。
IFA原田茂行氏
【プロフィール】
大和証券、SMBC日興証券、野村証券を経て株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属し、IFAとして独立。日本証券アナリスト協会検定会員、囲碁三段。(記事提供:
株主手帳
)
【編集部のオススメ記事】
・「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
・資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
・会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
・年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
・元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)