日銀,追加緩和
(写真=PIXTA)

4月27・28日の金融政策決定会合で、日銀が追加金融緩和に踏み切るかどうかが注目されているが、追加金融緩和の確率はまだ30%でメインシナリオではないと考えるのは、その前には八つのハードルがあると考えるからだ。

1.追加緩和のタイミング見極め

日銀は、量・質・金利の三次元で追加金融緩和ができる環境を1月に整えたが、緩和は乱発できるものではないと考えているだろう。国債発行に占める日銀の買い入れの割合は極めて大きく、日銀が主要企業の大きな株主になってしまっている状況である。実際のところ、マーケットはもう一回の緩和の機会を日銀が取り戻しただけと考えているとみられる。その一回の緩和の機会が使われれば、またマーケットは緩和手段の限界を意識し始めるリスクがある。

2.景気判断に「回復」と入れたい思惑

既に1月にリスク対応の追加金融緩和は行っているため、再度の追加金融緩和があるとすれば、景気判断から「回復」という表現が消したり、2017年度前半の2%の物価目標の達成時期の予想を後ずれさせる時だろうが、その場合、アベノミクスは失敗したとの評価が広がるリスクがある。日銀はできるだけ「回復」という表現と達成時期の予想を維持したいだろう。

3.マイナス金利の効果浸透待ち

日銀当座預金残高でマイナス金利が適用される額を10-30兆円程度から増加させ、無担保コール翌日物の金利のマイナス幅を拡大することにより、政策委員会の議決を得なくても、擬似的な追加金融緩和もできるシステムになっている。または、貸出資金支援基金の金利をマイナス化させるなど、マイナス金利政策の制度をまだ拡充できる余地がある。そして、日銀はまだマイナス金利の効果が市場に浸透している最中、または功罪の点検中であると考えているとみられる。

4.消費税率引き上げとの兼ね合い

日銀が追加金融緩和に踏み切れば、消費税率引き上げはかなり大きな景気下押しとデフレ圧力をかけ、景気の現状が良くないことを認めたことになる。消費税率引き上げなどの財政再建によって、将来の金利高騰への懸念が小さくなり企業が投資を増やし、社会保障の持続性への信頼感が増し家計は消費を増やし、経済には刺激効果があるという、政府・日銀が信じ消費税率引き上げを推進してきた「安心効果」の否定となる。安倍首相の消費税率再引き上げの判断、またはそれに関連した衆議院の解散の決断に影響する可能性がある。

5.マイナス金利負担の悪影響を懸念

マイナス金利政策の評判は、金融機関だけではなく、国民の間でも芳しくない。金融機関はマイナス金利のシステム対応にまだ追われているようだ。実際に、プラス金利がまだ適用される残高に余裕がある金融機関が、その枠をコール市場で他の金融機関に融通する裁定取引は日銀の想定に反してあまり進んでおらず、マイナス金利の適用幅が日銀の想定よりまだ上振れている。そして、マイナス金利の負担の拡大が、金融機関や家計で意識されれば、震災復旧の妨げになるという批判のリスクがある。7月の参議院選挙前に国民の不評を悪化させることを政府は望まないだろう。

6.一時的な効果に留まることを避けたい

量的金融緩和でマネタイズすることによって効果が生まれるネットの国内資金需要(企業貯蓄率と財政収支の合計)が消滅してしまっていて、2000年代と同様に、理論的にも追加金融緩和の効果は限定的な状況になってしまっている。実際に、円安や株高などの景気浮揚効果がまだ実感できていない。追加金融緩和で、また円安・株高が一時的であれば、日銀の金融政策に対する信頼感が喪失してしまうリスクがある。

7.将来的に景気・物価・マーケットを不安定化させるリスク

G20では、金融政策の限界が意識され、財政政策を含む政策の総動員で需要を拡大させることで合意している。グローバルなマーケットの反応も、金融緩和には限定的で、財政拡大を求めるようになってきている。または、財政政策の拡大が、既存の金融緩和の効果を強くすると考えるようになってきている。リフレ政策の源になってきたネットの国内資金需要は最大でもGDP対比3%程度(15兆円程度)であり、年率80兆円のマネタリーベースの積み上げやマイナス金利政策はそもそも過多である。必要なのは、ネットの資金需要を拡大する財政政策や企業刺激策である。財政緊縮のツケを金融緩和に回し続けたことが、将来的に景気・物価・マーケットを不安定化させるリスクになっている。

8.国際社会での評価をうかがう

5月の日本でのG7・サミットで、議長国である日本が需要拡大のリーダーシップ役としての責任を果たすことが重要と認識されている。日本は既に貿易黒字に戻っている。ドル円の変動が収まりつつある中で、また変動を大きくする通貨切り下げ競争と誤解されるような追加的な金融緩和は、景気・物価動向の判断を大幅に下方修正しない限り、国際政治上で正当化しずらい。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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