会社設立
(写真=PIXTA)

2006年(平成18年)5月に新会社法が施行され、「有限会社制度」が廃止されました。それに伴い、「株式会社」の設立要件が緩和され、設立手続きも簡略化されています。また、最低資本金「1000万円」が「1円」になり、以前に比べて設立のハードルがかなり下がりました。今回は、株式会社設立の要件と手続きについてご説明します。

1. 会社の機関を設計しよう

まず、役員の数や監査役の設置など「機関設計」を行います。例えば、株式を譲渡する際に会社の承認を必要とする規定を設ける場合には取締役会の設置は任意ですが、承認を必要としない(株式を公開する)場合には取締役会を設置しなければなりません。取締役会には最低でも役員3名(うち代表取締役1名)と他に監査役1名が必要になります。もし取締役を設置しない場合には、取締役1名(代表取締役)のみで監査役は必要ありません。

2. 商号(会社名)・本店所在地を決めよう

次に商号(会社名)・本店所在地を決めなければなりません。商号には、「株式会社」の文字を入れる、日本文字・ローマ字・その他決められた文字・符号を使う、会社の一部門(例:支店、営業部など)を表す文字は使用しない、有名な会社の商号は使用しない、「銀行」や「信託」の文字をいれない、などの制約があります。

以前は、同じ市区町村内で同じ業種で同じ商号を使用できませんでしたが、新会社法では、この規制が廃止されています。ただし、同一の住所地に同一の商号を用いることは出来ませんから、念のため本店予定地の管轄法務局で、同一商号の調査を行う方がいいでしょう。

3. 会社の事業目的を決めよう

次に会社の事業目的を決めなければなりません。会社設立後すぐに始めようとしている事業、現在興味をもっている事業、将来やっていきたいと考えている事業の3つに分けて整理しましょう。なお事業目的については、他人から見て何をする会社か分かるようにする、法律で規制されている事業はできない、事業目的の文字は原則として日本の文字しか使えないなどの制約があります。

4. 発起人などを決めよう

最後に発起人、役員(取締役・監査役)、資本金、事業年度を決めます。発起人とは、株式会社の設立企画者として定款に署名する人のことで、1人以上(1人でも可)必要です。

資本金は新会社法の施行で「最低資本金制度」が撤廃されたため、理屈の上では「1円」でも設立が可能となりました。しかし、資本金は会社の運営をしていく上で当座必要な資金となるため、ある程度の資本金は準備しておく必要があります。

また、代表取締役や会社名・住所が決まったら、各種印鑑を作成します。最低限「代表者印」、「銀行印」、「社印(会社名のみ)」、「ゴム印(会社名・住所・代表者名)」は必要です。

5. 定款の作成・認証を行う

株式会社の概要が決まったら、「定款」の作成です。「定款」とは、会社の目的や組織、業務などについて基本的なルールを定めたものです。会社を国だとすれば、定款は「憲法」に当たるものと考えるといいでしょう。商号、目的、株式総数、本店所在地、発起人の氏名・住所など、記載すべき事項が厳密に定められています。

定款には、発起人全員の記名と押印(実印)が必要です。また同じ定款を3部(公証役場用、法務局・登記所用、会社保存用)作成しなければなりません。

その後、「定款の認証」を受けることになります。具体的には、公証役場に持参して公証人から内容をチェックしてもらい、間違いや不備がなければ「認証」をもらえます。この手続きでは、発起人の実印・印鑑証明書、費用が必要です。費用は、認証手数料(5万円)、収入印紙代(4万円)、謄本手数料(約2千円)です。

ただし、定款の作成・認証は専門的な知識が必要ですから、行政書士に依頼する方法もあります。特に「電子認証」に対応できる行政書士に依頼した場合には、収入印紙代がかかりませんので、費用が節約できます。

6. 設立登記をしよう

これまでの手続きが完了したら、会社を正式に登録する手続きを行うことになります。「登記申請書」に「OCR申請書」、「定款」、「登録免許税納付台紙」、「印鑑届出書」「払い込みがあったことを証する書面」、「資本金の額の計上に関する証明書」、「印鑑証明書(取締役)」などを添えて、法務局・登記所へ提出します。

なお、法務局・登記所へ納付する「登録免許税」は株式会社の場合15万円で、法務局・登記所で収入印紙を購入し「登録免許税納付台紙」に貼ります。「払い込みがあったことを証する書面」とは、事前に株式を全て「金融機関」に振り込み、金融機関から「払込金受入証明書」を発行してもらうか預金通帳の写しを準備します。

この「設立登記申請」も「定款の作成・認証」と同じく専門性が要求されますので、司法書士に依頼する方法もあります。書類の不備や記載漏れなどがあった場合、手続きが遅れて会社の設立日に影響することも考えられますから、多少費用がかかっても司法書士に依頼した方が確実だといえます。

7. 設立後の諸手続きをしよう

登記が完了したら、各種手続きを行う必要があります。税金関係は税務署、市区町村役場、県税事務所へ、労働保険・社会保険関係は労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所へ届け出ます。

まとめ

個人事業に比べて会社組織の方が、節税の面でもかなりのメリットがあります。

新会社法の施行によって手続きが簡略化されたため、以前に比べて会社の設立が容易になりました。新たに事業を始めようとしている方は、是非参考にしてください。(提供: TRUSTAX

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