北海道新幹線,地方創生,地域振興
(写真=PIXTA)

北海道新幹線が開業して1カ月。経済波及効果に期待した地元だったが、実際には盛り上がりに欠けたようだ。

JR北海道の2016年度(17年3月期)事業計画によれば、売上高の営業収益は15年度比97億円(17%)上積みの920億円を見込む。

しかし開業から3日間の平均乗車率は43%だったと発表した。日付別では、開業初日の3月26日(土)は1万4200人が利用し乗車率は61%と3月最高。27日(日)は8700人で37%、3月28日(月)は6800人で31%と急激な減りようだ。

3日間の利用者数は2万9700人で1日の平均利用実績は9900人と、何とも先行き暗いムードは否めない。

北陸新幹線は開業フィーバー

北海道新幹線の開業9日間の平均予約率は24%と低調だったが、暖かくなるゴールデンウィークでの利用客増大を期待している。北陸新幹線の開業は15年3月14日だが、開業から3日間で8万4000人の利用となり、平均乗車率は48%だ。

利用客はざっと北海道新幹線の2.8倍で、乗車率は5ポイント高い。今年4月13日で利用客は1000万人を突破。大台への到達は開業から1年と1カ月だった。

在来線特急の2倍程度と想定していたところ、実際には3倍だったわけで、2年目に入るがまだ勢いは続いている。おかげでJR東日本は自社の運営区間だけで予想を大きく上回り、収入は450億円になった。

一方の北海道新幹線だが、計画では111億円の収入に対し支出は160億円。49億円程度の赤字になると試算している。

この状況が続けば事業の継続はかなり難しいし、鉄道サービスという同社の使命を果たすことは難しいと見るべきだ。

今でも安全上のトラブルが続いて経営が厳しい。それなのにこれでは「新幹線は来ないほうがよかった」と思われるのではと同情したくなる。数年後にはJR北海道の救済が重要な政治的テーマになることは誰の目にも明らかだ。

青函トンネルとその前後区間82kmは減速

新幹線か航空機か。そこを分けるものは「4時間の壁」だ。4時間を切ると新幹線が優位に立つことから、北陸新幹線では航空各社は打撃だった。しかし北海道はそうはいかない。

北陸新幹線は東京−金沢間が2時間28分。一方の北海道新幹線は東京−新函館北斗間4時間2分。さらに20分の乗り換えをしてようやく函館に着くので、北海道旅行は飛行機のほうが有利となる。

実は新幹線が遅いイメージに受け取られるが、青函トンネルを含む82kmの区間でドラマがある。北海道新幹線の最高速度は時速260キロだが、貨物列車と線路を共用している関係で、すれ違う際は時速140キロに減速しなければならない。このため4時間を超えてしまうのだ。

そこでひねり出したアイデアが、青函トンネルの中を走る貨物列車。2020年代前半の実用化を目指しコンテナを直接載せる方式で走らせる方向で検討を始めた。

コンテナ新幹線が本命なのかと言われそうだが、青函トンネルとその前後の区間82キロメートル間では、時速260キロメートルの新幹線と在来線の貨物列車がすれ違ったときの風圧が未知数。

このため新幹線は共用区間では高速走行はせず、在来線特急並みの時速140キロで速走行するという。安全第一だ。

「コンテナ新幹線」というアイデア

これまでも存在した貨物新幹線構想だが、新幹線の走らない夜間に貨物特急を走らせる方法は残されている。

既存の新幹線の座席を撤去し、大手宅配会社の専用ボックスを積み込んで、時速200キロメートル以上で走行する。手軽で実現性が高そうなアイデアだ。

幹線と貨物列車の走行時間を明確に分けるとか、トンネルに隔壁を作り上下線を区別するやり方といった案も出たが、新幹線開業時は在来線並みに「減速」で行くことになった。

しかしそのツケはあまりに大きく、せっかくの新幹線が宝の持ち腐れになってしまったようだ。コンテナ新幹線はまだ「勉強を始めた」というレベルにすぎない(不可能ではないとの意見も根強くある)。

北海道の水産物は、航空便とトラック便で運ばれるが、航空機は運賃負担が大きいし、トラック便は青函フェリーと高速道路経由なので多くの時間を要する。悪天候になればフェリーの遅延や欠航するという問題を抱えている。

東京行きの始発便と最終便を利用するアイデア

片石温美・室蘭工業大学地域共同研究開発センター准教授の案は、既存の新幹線の1両を荷物輸送用に改造し、東京行きの始発便と最終便の2便で毎日使用する。

この場合、年間約6000トンの水産物の輸送が可能としている。

輸送システムの構築が実現すれば、道南産水産物ばかりか、農産物が豊富な北海道から輸送できる。新幹線輸送は(赤字経営が想定内である以上は)無視するわけには行かないのだ。

全日本空輸(ANA)の「旅割55」を見れば、搭乗日の55日前に予約すれば羽田〜函館間が1万2000円台後半から購入できることもある。なぜ料金で飛行機に対抗しないのだろうか。(ZUU online 編集部)

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