(写真=Thinkstock/Getty Images)
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「株は5月に売れ」という相場格言がある。株価は年初から5月まで上昇を続け、夏場に下がる傾向があるため5月が売り場という経験則だ。今年は例年になく不透明感が強い。ここでは注意すべきイベントと株価に与える影響を整理していく。

5月の相場は不透明感が強い

年初から波乱が続いた今年の株式相場は、3月にいったん落ち着いたかに見えたが、4月に再び大きく荒れた。日銀短観の景況感悪化や円高を嫌気してTOPIXが3%以上急落して始まったあと、月半ばの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議や増産凍結合意に至らなかった産油国会合への失望をはじめ、原油価格や為替レートの動きに振り回された。

一日の騰落率が2%以上だった日数は1、2月のそれぞれ12回、7回から3月に1回に収まったあと、4月は再び8回と大きく増えた。結局、4月は小幅高で終わりTOPIX終値は2月半ばの安値から12%戻しているものの、年初からは依然11%のマイナスだ。

5月も不安定な相場になりそうだ。現在、株式市場が最も気にしているのは世界経済の先行き。それによって日米欧の金融政策も自ずと決まってくる。投資家は主要な経済指標の動きに神経をとがらすと同時に、日本で5月に開催される2つのG7会合に注目している。20日に仙台で開かれるG7財務相・中央銀行総裁会議と26日から始まる伊勢志摩サミットだ。

主要国はすでに従来の金融政策の効果に限界を感じており、景気を浮揚させるには財政出動が必要との考えに傾いている。したがってこの2つの会議では各国の財政政策が重要な議題になる。その方向性のカギを握るのはドイツのメルケル首相だ。先進国のなかで比較的高い成長を続ける同国は財政規律を重視し、支出を増やすことには消極的。同氏の協調姿勢を引き出せないと月末のG7会合で財政出動に対する各国の足並みが乱れかねない。

G7が財政出動で協調できるかがカギ

さらに重要なのは18日に発表される日本の今年1-3月期の国内総生産(GDP)速報。景気減速が深刻であれば、大きな景気マイナス要因となる消費税増税の再延期が視野に入り、7月の衆参ダブル選挙の可能性が高まる。予定通り増税を行う場合は、そのマイナス効果を補うための財政拡大が必要になる。

その結果次第で2つのG7会合の方向づけも変わってきそうだ。増税に踏み切る場合は日本の財政支出拡大を強調できるため、各国にも財政出動を要請しやすくなる。しかし再延期を決めた場合には、どの程度インパクトのある財政政策を打ち出し、各国首脳がそれにどう反応するか不透明だ。

日本の財政・金融政策の選択肢はますます狭まっている。消費税再増税となれば日本全体で少なくとも3兆円の購買力が失われる。これを緩和するには5~10兆円規模の追加経済対策が必要だろうし、熊本・大分地震の復興資金もいる。増税後に景気が落ち込めば税収が減り、公約に掲げる20年度までの基礎的財政収支の黒字化が危うくなる。

日本の1-3月GDP次第で増税再延期、ダブル選挙も

他方、日本銀行も円安誘導につながる金融政策が封じられ、手詰まり感が強い。米財務省は4月29日、貿易相手国の通貨政策を分析した為替報告書で初めて「監視リスト」を設け、対米貿易黒字が大きい日本など5カ国を指定した。最近の円高傾向についても「円ドル相場は秩序的」とし、日本の円売り介入を改めてけん制した。日銀に残された手だては、副作用の少ないETF購入の増額くらいかもしれない。

日本株の視点で見ると、増税が先送りされ、サミットで財政出動の合意に至れば万々歳というところだが、そうでなければ波乱含みだ。当面は各国の経済指標やG7会合の動向で一喜一憂する相場展開が予想される。

ただ、5月にはもっと重要なイベントがある。日本企業の業績発表だ。株価は短期的イベントで大きく上下することはあるが、トレンドを決めるのは企業業績である。各国の財政拡大で世界経済が上向くというバラ色のシナリオを描くにはまだ早過ぎる。

日本の企業業績が株価トレンドを決める

3月初旬に野村HDなど大手証券会社が行った業績集計では、15年度予想を大きく引き下げ、16年度の経常増益率(金融除く)も昨年12月予想の6~9%増から4~7%程度に軒並み下方修正した。円高と中国景気減速が逆風となり、自動車など輸出企業の収益を圧迫する予想だ。ただ、その際の為替前提レートは110~117円/ドル。足元では、日銀が金融政策の現状維持を決めてからわずか数日で6円近くも上昇している。1年半ぶりに105円台へ突入を見せる円高水準となっている。

ハイテク産業の大きなけん引役であったスマートフォンはアップルが13年ぶりの減収になるなど転機を迎えている。エネルギー産業も価格下落により実質収益ベースではマイナス成長が見込まれる。加えて前期に1ドル約120円だった為替レートが、仮に110円程度だとしても自動車や電子部品を中心とする輸出産業へのマイナス影響は大きい。

4月末までに決算発表を終えた244社(電力、金融を除く)を日本経済新聞社が集計したところ、今年1-3月期の経常利益は前年同期比20%減と、昨年10-12月期の減益幅の2倍に膨らんでいる。企業業績が今後の株式市場にボディーブローのように効いてくる懸念は当分拭えなそうだ。(シニアアナリスト 上杉光)

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