中国,都市,地方
(写真=PIXTA)

中国関係の著書が多い作家、故・陳舜臣氏(1924〜2015)はある随筆の中で、北京人—上海人—広東人の差異は、日本人と韓国人の差異以上に大きいという趣旨のことを述べていた。

大方の日本人はそんなはずはあるまいという反応だろう。

しかし中国に長く関わっていると、これがだんだん頷けるようになる。また北京=愛国、上海=出国、広東=売国、という有名な言い回しもある。以下この3地域の特色について考察したい。

北京オリンピックVS上海万博

2008年、北京オリンピック開催年。上海における北京オリンピックのPR活動は極めて貧弱だった。反対に2010年の上海万博の年、北京における上海万博PR活動も同様に低調だった。これはなかなか気付きにくく、旅行者や出張者ではまずわからない。住んでいる人でも指摘されて初めて、「そういえば、そうだったかな」と思う程度だ。

しかしこれは紛れも無い事実だった。

理由はシンプルだ。北京人と上海人はお互いに反目しあい、ときに無視を決め込もうする。どちらも自分たちこそ中国を代表している、という自信と誇りに揺らぎはない。そしてどちらにとっても相手の存在はとても目障りなのである。相手の宣伝活動に協力などするものかという意識が自然に働いたのだ。

地下鉄と空港の争い

北京の地下鉄は1969年に公務員の通勤用として開通し、一般市民には1977年から開放された。上海に地下鉄が初めて開通したのは1995年で、20年近いギャップがある。

しかし1990年頃、上海人はみな口を揃えていた。「北京の地下鉄は、上海から吸い上げた税金で作った。」当時の上海と北京の経済力の差からみて信ぴょう性は高い。

今も両都市は、地下鉄で激しく競い合っている。2014〜15年段階では総延長600キロ前後で拮抗している。第13次5カ年計画終了2020年までに、北京30路線1050キロ、上海21路線780キロ、の建設計画が決定した。この争いは、四方八方が陸地という有利のある北京の勝利で決着しそうだ。

1999年に上海に2つめの空港、浦東国際空港が開港したとき、上海人は少し大げさな表現だが、喜びに震えていた。「北京には空港が一つしかない。このアドバンテージは果てしなく大きい」

しかし2012年、北京でも第二空港(2019年暫定開港予定)が発表され、まもなくデュースに戻ってしまう。

筆者は北京に居住経験はないが、出張で定期的に北京の取引先を訪問していた。某取引先の女性北京人部長はさっぱりした性格で、誰からも慕われていた。

その彼女にあるとき「御社を担当するウチの中国人スタッフを、これまでの青島人から上海人に交代させる」と告げた。すると「それだけは勘弁してほしい」という強い拒否反応が返ってきた。

この後、「すまん、詳しく言うと浙江省の出身だ」と言うと、「もっと悪いじゃないの」と会話が続いた。

北京人はやはり“上海”と聞くと、人柄の良さも吹き飛んでしまう。

「こすからい」? 広東人

広州交易会という有名な貿易展示会がある。1957年からの長い歴史を誇り、2016年春期で119回目の開催となる。特に改革開放前は、ほとんど唯一の輸出入商談会だった。現在でもそれなりの存在感を維持している。商品群ごとに中国の輸出市場傾向をつかむのに、最適のツールだからだ。

2000年頃、初めて出席した。宿泊料金は噂通り通常の2倍だった。主要な移動手段はタクシーである。

しかし参加者は、ホテルー展示会場—飲食場所間の移動ばかりで長距離需要は少ない。ところが広州の運転手はそれを創出する。乗客に広東人はいない。よそ者だけと分かればすぐに遠回りを敢行する。

このとき2泊3日で7〜8回利用した。街の様子がわかるようになった最終日、市内地図で検討してみた。どうやら最短距離を走った正直な運転手は1人だけだった。

広州市で受けたマッサージも印象的だった。マッサージ師は年配のオバサンだった。彼女は私の下手な中国語を聞いて、「お前は上海人だな」と言って一人で納得していた。広東人がよそ者として、思い浮かべるのはまず上海人なのだ。もっと北方の中国人となると想像範囲を超える。おそらくロシア人など外国人イメージに近いのだだろう。

北方の中国人からこんな話を聞いた。

広州で広東人と会食したときのことだ。ある広東人に、最初に手を付けるべき料理を指示された。彼がそれに箸を付けると、場の空気が重くよどんだ。それは広東の食習慣では最初に食べてはいけない料理だった。広東人はうそを教え、北方の中国人をいたぶったのだ。北方の田舎者を貶めたところで何の心の痛痒も感じない。日本人の考える同国人意識は、ここにはない。

自己中心の中国は分裂したほうがよい?

北京=愛国、上海=出国、広東=売国、という言い回しは、それが適合するかどうかより、中国がバラバラであることの例えとしてとらえたほうがよい。

中国流思考は、個人、一族、組織、国家、あらゆる単位で自己主張とそれらの衝突を繰り返している。各地域もこのパターンに漏れず自己の勢力拡大を図っている。

とにかく意識においてこの3者は別の国である。もともと中央政府の存在など何とも思っていない。ここらでライバル心を思い切り開放し、中国史で2度目となる“三国時代”を実現してもらうというのはどうだろうか。(ZUU online 編集部)

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