国連承認の公益社団法人、セーブ・ザ・チルドレンが179カ国の母親と子供の幸福度を調査したところ、上位10カ国は欧米が独占し、14位のシンガポールがアジア最高順位で、続いて韓国が30位、日本は32位だった。

妊娠中から支援体制は完璧 安心して子供を持てる環境ありの欧州

欧州が上位を独占したこの「世界の母親の状況(State of the World’s Mothers)」では、評価対象は「母子の健康(死亡率)」「教育」「経済(国民総所得)」「政治(女性議員数)」。上位10カ国はすべての項目で、おおむね高得点を獲得している。
政府や関係機関、社会が一丸となって、女性が妊娠中から仕事と子育てを両立しやすい環境作りに力を注いでおり、女性もその恩恵を最大限に活かしている様子がランキングに反映されている。
ランキング最下位は東アフリカに位置する連邦共和国、ソマリア。1991年の内戦勃発、政治情勢が不安定なまま国土が分断され、「世界1治安の悪い国」として今なお内部紛争が続いている。母親と子供にかかわらず、すべての国民にとって「健康」や「幸福」とはかけ離れた環境だ。政府が「母子の健康」に重点を置いている国とそうでない国の差が、顕著に表れた結果といえるだろう。

女性の政界進出で大きく出遅れている日本

G7国から唯一トップ10入りを果たしたドイツ(8位)を筆頭に、イタリア(12位)、カナダ(20位)、英国(24位)、フランス(23位)、米国(33位)で、日本はG7内で米国に次いで下位に位置している。
日本は「妊産婦死亡率(1万2100分の1)」や「5歳以下の子供の病気による死亡率(1万分の29)」が世界平均をはるかに下回り、「教育」「国民総所得」も高レベルと、母子にとっては非常に平和な国という印象を受ける一方、「女性の政界への進出率」が著しく低いのが大きな特徴だ。
議員の6割弱(57.5%)が女性というルワンダ共和国を筆頭に、スウェーデン(43.6%)、アイスランド(41.3%)、ドイツ(36.9%)など、多くの国で女性議員の割合が25%から40%であるのに対し、日本はわずか11.6%。ほかのアジア諸国と比較してみても、中国(23.6%)やシンガポール(25.3%)の2分の1以下だ。

母子環境の改善が望まれるアジア

アジア諸国の上位3カ国は、シンガポール(14位)、韓国(30位)、日本(35位)など、ランキングで見る限りアジアはあまり「お母さんに優しい国」ではないようだ。
シンガポールはアジアの中では比較的全項目のバランスがとれており、女性と子供が将来に希望を抱いて生活を送れる環境といえそうだ。国民1人あたりの収入も5万4040ドル(約604万円)で、日本(4万6330ドル/約518万円)やドイツ(4万7270ドル/約528万円)など多くの発展国を上回っている。

韓国は「妊産婦死亡率」が先進国の中でも非常に高く、2900人に1人の女性が出血多量や感染症といった様々な原因で死亡している。また所得面でも2万5920ドル(約290万円)と首位ノルウェーの5分の1程度だが、平均教育期間は16.9年と日本(15.3年)、米国(16.4年)、英国(16.2年)を含む多くの先進国よりも長い。また16.3%という女性議員数でも日本に勝っている。

32位 日本
30位 韓国
14位 シンガポール
10位 ベルギー
9位 オーストラリア
8位 ドイツ
7位 スペイン
6位 オランダ
5位 スウェーデン
4位 デンマーク
3位 アイスランド
2位 フィンランド
1位 ノルウェー

「女性活躍」を掲げながらも、働くお母さんを受け入れる体制が整っているとは、お世辞にも言えない日本。いくら無事に子供を産むことができても、彼女たちが求めているのはそれだけではない。一人一人が働くお母さんに理解を示すこと、その最初の一歩は自分のお母さんを大事にすることからではないだろうか。(ZUU online編集部)