最大10連休と言われたゴールデンウィークが終わった。社会人にとって、大型連休は日頃の心身の疲れを癒す絶好の機会であるが、一方で連休明けにメンタル面の不調を訴える人も多い。今回は特にこの傾向が強く見られる新入社員に焦点を当て、その原因と対処法を紹介する。

遅寝遅起きのリスク

まず大型連休で多く起きる問題が、「生活リズムの乱れ」である。「明日は休みだ」と思うと得てして夜ふかししたり、起床もゆっくりになったりする。まして体力があり、家族サービスを求められず、自由に時間を使える立場ならなおさらだ。これが1日2日であれば問題はないが、1週間も続けば影響が出る。

体が「深夜=活動する時間」、「朝=休む時間」と間違って覚えてしまうのである。

普段の起床・就寝時刻に戻しても、体は違った時刻を記憶している。このため夜は寝付けず眠りも浅く、朝は頭も体も思うように動かない。結果心身にモヤモヤとした怠さを感じるようになってしまう。この状態で働くのは大きなストレスとなり、メンタルの不調の原因となる。

お薦めする対処は2つある。「就寝前1時間のスマホ禁止」と「起床時の朝日浴」である。これらは、夜は休む時間、朝は活動する時間と体にメッセージを与える事になり、生活リズムの改善効果が期待できるので、該当する部下には是非アドバイスして欲しい。

草食化の影響がここにも?

働く目的を問われたら、何と答えるだろうか。自己実現や社会貢献、周りからの賞賛といった無形のものを目的として働く人もいれば、シンプルにお金目的という人も多いだろう。答えは様々だが、こうして何かしらの目的を持つからこそ、仕事を続ける意欲もわくものである。逆に目的を持たずに働くことはそれだけで心の負担となる。

しかし最近では、目的もなくとりあえず働くという人が増えてきている。やりたいことがあるわけでもない。人に認められたいわけでもない。贅沢にもさほど興味がない。ただなんとなく、周りと同じように就職し働く。若者の草食化が叫ばれて久しいが、その影響は恋愛に限ってのことではない。仕事や生き方にまで及んでいるのだ。

ゴールデンウィーク明けは、研修期間が終わり、いよいよ仕事が本格化していく時期でもある。それに合わせてストレスも増え、働くことにあまり目的を持たないこのタイプは、次第に気力を失っていく。また、とりあえずの生活費なら責任の軽いアルバイトで賄えると考え、簡単に退職してしまう。

彼らに「社会人の自覚」を求めるのは逆効果。まずすべきは、働く意欲を育むことだ。それには、未来の自分をイメージさせると良い。実現できるかは問わず、3年後や5年後に「どんな自分になっていたいか」「どんな生活をしていたら幸せか」を存分に描いてもらう。仕事で得られる安定した収入は少なくとも描いた未来に近づくための資金にはなるので、働く意欲に繋がる。他にも、働くことで得られる喜びや楽しさ等ポジティブな面を語るのも効果的だ。

ゆとり世代以降の特徴

「新型うつ」という言葉をご存じだろうか? 何もやる気の起きない一般的なうつとは違い、仕事のみやる気が起きず、それ以外の趣味などは元気に楽しめる、新しいタイプのうつの事である。休職中に海外旅行に行った人間の話など、一度は耳にした事のある人も多いだろう。

ゆとり世代以降に増えているのだが、その原因として「頑張る力の不足」が挙げられる。2番目に挙げた草食系とは違い仕事への目的意識は持っているが、達成のために自らPDCAを回すことができず、仕事が本格化するとついていけずにストレスを溜めてしまうのである。勉強、部活、アルバイト……学生時代に何かに継続して取り組み、大小問わず成功体験を得た事の無い新入社員には、こうしてメンタルを崩すリスクがある事を頭の隅に置いておくべきだろう。

この場合の対処はシンプルだ。多少の困難でも努力するたくましさを育てれば良い。部下と一緒にPDCAを繰り返し、成功体験を積ませるのである。この時注意して欲しいのが「C」だ。日本マネジメントケアリスト協会理事長の浅井浩一氏が著書『はじめてリーダーになる君へ』(ダイヤモンド社)で述べているが、PDCAのCをチェックではなくケアと考え、新入社員の心身の調子をしっかりと気にかける。この一手間が、慣れない努力をしている者にとって大きな支えとなるので、是非とも実践して欲しい。

ゴールデンウィーク明けは、多くの新入社員にとってメンタル不調に陥るリスクが多い時期であり、不調の原因によって効果的な対処も異なる。自分目線で決めつけず、まずは部下と向き合い、どうして苦しんでいるのか原因を見つけることから始めて欲しい。

藤田大介 DF心理相談所 代表心理カウンセラー

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