ドローン,Amazon、DJI
(写真=PIXTA)

Amazonがドローンを使った配送サービス「Amazon Prime Air」の映像を発表したのが2013年12月。当時そのビデオは、企業ブランディングのためのコンセプトムービーではないかと勘違いされたほど衝撃だった。

もはやドローンが荷物を配送するのは妄想でも絵空事でもない。Amazonは昨年7月に「ドローンスーパーハイウェイ構想」を提案、さらに11月には新型の大型ドローンを公開した。

日本国内でも動きがある。12月には通称ドローン法(改正航空法)が制定され、ほぼ同時期に千葉市がドローン特区に指定された。もしかすると世界初のドローン宅配が千葉市で開始されるかもしれないという状況だ。

2回に分けて、ドローン市場の動向と見通しについてレポートしたい。

(1)ドローン市場は今、商用化の潮目に来ている

ドローンとは無人航空機全般のことだ。他にもUAV(Unmanned Aerial Vehicle)という略称で呼ばれたり、回転翼の数からマルチコプターとかクアッドコプターと呼ばれたりするが、ドローンという呼び方が一番よく知られた呼び名だろう。ちなみに、ドローン(Drone)は、オスのミツバチという意味で、起動音が蜂の飛んでいる時の羽音に似ていることに由来するそうだ。

一体いつ頃からドローンは話題になってきたのだろう。1990年代後半、自分が学生時代に宇宙科学研究所の研究員として、夜な夜な実験をしていた時、すでに無人航空機の研究発表が盛んに行われていたのをかすかに記憶している。当時は、無人航空機=軍事用途という印象で、今ほど商用での可能性は見出されていなかった様に思う。

それ以降、ドローンについて気にも留めていなかったが、『フリー』や『ロングテール』といった本の著者で、米国IT誌『ワイアード』の名物編集長だったクリス・アンダーソン氏が、編集長を辞任し自ら起業したドローンの製造会社3Dロボティクスに専念する発表を見て、自分の場合はドローンビジネスという存在を初めて知った。それは確か2012年ごろだった。

一般にドローンと聞くと何を思い浮かべるだろうか。ドローンという言葉が一躍広く知れ渡ったのは残念ながら良いニュースではなかった。2015年4月22日に元自衛官が、DJI社のドローン(Phantom)を使って、危険物を落下させた首相官邸無人落下事件だ。あの事件によってドローンは、ビジネスチャンスというよりも社会的な脅威やリスクとして扱われた。

この事件にも驚いたが、もっと驚いたのは、その事件で使われたドローンを製造販売しているDJI社が、その翌日4月23日にGPS設定により首相官邸と皇居近辺をドローンが飛行できない様に設定することを発表したことだった。ドローンのイメージダウンを避けるためであるが、機敏な対応はネット上で盛り上がった。

この事件をきっかけにドローンは、多くの人に知られる様になり、ドローンがここまでできるのかと驚くきっかけにもなった。ただ、ドローンの話を周囲にすると人によっては「何か怪しい」と言われることもあり、まだドローンにはそう言ったマイナスイメージ感も残っているかもしれない。

言わずもがなドローン自体は怪しいものでも何でもなく、使い方次第ではとんでもない可能性が秘めたビジネスシステムだ。ただ、ドローンがパソコンやスマホと違って、「空」を自律的に動くことができるため、前述の事件が起きない様、ドローンの進化と合わせて様々なルールや規制が必要というだけだ。今、まさにそのルール作りが急速に議論され、ドローンの利用を促進するという方向でコンセンサスが得られようとしている。