自動運転車
(写真=PIXTA)

日・米・欧州の各国が、自動車と情報通信とを融合させて、新しい自動車交通システムの開発を進めている。中でも、最近、注目されているのが「自動運転技術」。トヨタ自動車 <7203> や日産自動車 <7201> などの大手自動車メーカーに加えて、ロボット・自動運転技術のベンチャーであるZMPも、開発を進めている。

また自動車メーカーや自動運転技術開発社だけではなく、Google や Facebook、Appleなど、IT大手企業も、自動運転技術の開発を推進している。今回はその、自動運転技術を分かり易く解説するとともに、開発動向などを紹介する。

「自動運転技術」とはそもそも何か?

「自動運転技術」は、ドライバーを必要とせず、車そのものが自律的に走行する、いわゆる「完全自動運転」の姿を究極の形にしている。他方で現状では、ドライバーの安全な運転を支援する「安全運転支援システム」のカタチで実装されつつある。具体的には、運転を部分的に自動化し、交通事故の危険が迫った時、制御システムがドライバーの操作に介入する仕組みだ。

「運転支援システム」については、ドライバーの認知・判断・操作といった運転操作を補助する機能だとされ、「自動運転」はそれをさらに高度化したものだといえる。さらに、自動運転はその実現のために、走行環境認識や危険判断を制御システムを必要とし、将来的には自動車自身が走行環境を認識し、全自動での走行を目指している。

ただ、自動運転技術も今すぐに実現するわけではない。自動運転を実現するためには、安全運転支援システムで実用化されているセンシング技術、情報処理技術の性能、知能化および信頼性の大幅な向上が要求される。

「部分的自動運転」か?それとも「完全自動運転」か?

もう少し別の側面も説明しておこう。「自動運転」については、大きく分けて4つの段階がある。一つ目が、制御システムが制御を実行し、ドライバーは走行環境認識責任やシステム故障時のバックアップを担う「部分的自動運転」。もう一つが、制御システムが走行環境認識責任までを担い、ドライバーはシステム故障時のバックアップを担う「条件付自動運転」となっている。

さらに、ドライバーが搭乗するが、制御システムがシステム故障時のバックアップまでを担う「高度自動運転」が、3段階目。最後に、4段階目として、ドライバーは搭乗せず、制御システムがすべてを自動で行う「完全自動運転」がある。

いずれも自動運転であることに変わりはなく、第1段階から第4段階まで、徐々に自動化の度合いが強まるということだ。現在では、段階に沿って自動運転技術も発展していくとみられている。つまり、「部分的自動運転」から「条件付自動運転」、「高度自動運転」、そして「完全自動運転」に発展していくとみられているのだ。

特に、高度な自動運転を実現するためには、物体までの距離と方位を検出するだけでなく、物体の形状識別や、移動速度ベクトルの検出も可能な、高い分解能を有する3Dレーザーレンジセンサーの開発が必要。加えて、それぞれの技術要素をうまく組み合わせなければならないという事情もある。

現在、よく議論されている自動運転技術については、これで概ね理解できるといえるだろう。以下ではさらに、具体的な取り組みを紹介する。

独・BMWの自動駐車や、韓・起亜のレーン維持が実装済み

世界の国や地域の側面からも、自動運転の実現に向けた取り組みをみてみよう。最初に気になるのは、世界的な大手自動車メーカーを数多く抱える欧州についてだ。

欧州諸国の自動運転の実現に向けた取り組みでは、2020年までに自動合流を実現し、2025年~28年までに高速道路上の完全自動走行の実現を目指している。さらに、2027年~30年までに都市域の完全自動走行を実現することを目標に掲げており、自動運転車の実現に向けて具体的なプロセスを推進している。

欧州自動車メーカーは、自動運転車の自動走行試験も積極的に推進。ドイツのBMWは、「コネクテッド・ドライブ」と呼ばれる高速道路上で、すでに5000kmの「高度自動運転」のテスト走行を完了している。

前方の車両に追い付いた場合には、交通法規を遵守し、車両の追い越しを行うことが可能であり、ガントリーに制限速度が示されている場合は、制限速度を認識して最高速度を遵守することも可能である。

また、車外からリモコンの遠隔操作によって、クルマの駐車を自動で行なうことができる「リモート・コントロール・パーキング」を開発し、2016年中旬より日本市場に導入する予定である。

同じくドイツのアウディは、スマートフォンと連携した自動駐車のデモンストレーションを実施。ドライバーが目的地の施設入口で降車した後、スマートフォンからの指示で車両が自動的に駐車するというものだ。自動車は、周辺環境を認識しながら駐車場の空きスペースを探し、目的の駐車エリアを検知すると、駐車枠内に自動で駐車できるまでになっており、そうして先進的な取り組みが次々と現れてきている。

他方で、米国でも、自動運転車の実現に向けた動きが進む。「州」のレベルでは、自動運転を可能にするために有用な法案が成立するなど、大きく踏み出している。大手自動車メーカーの動きとしても、ゼネラルモーターズ(GM)が、2017年までに高速道路の本線に限定して、高速域での自動運転技術を採用した車両を発売する計画を発表。同社は、(1)高速道路本線における高速域の自動運転、(2)高速道路の全体における自動運転、(3)一般道を含めたほぼすべての環境に対応した自動運転の、3段階で自動運転技術の開発を進めている。

東アジア勢も自動運転技術の開発を強力に推進しており、無視できない。韓国の起亜自動車はすでに、自動運転技術に特化したブランド「DRIVE WISE」を立ち上げた。同社は2020年までに「部分自動運転」を、2030年までに「完全自動運転」の実用化を目標に掲げており、レーダーとカメラを使ったレーン維持と車線変更システム、GPSおよびセンサーによる高速道路以外での自動運転システム、緊急停止システム、渋滞アシストなどを開発している。

「自動運転」の完全実現は「2025年以降」

一方、日本政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、2015年6月の「官民ITS構想・ロードマップ 2015」の中で、2020年までに、安全運転支援システムの普及により、世界一安全な道路交通社会の構築を目指す姿勢を示している。

さらに、2020年代前半までに自動合流を、2020年代後半以降に完全自動走行を実現して、2030年までに、自動走行システムの普及により、「世界一安全で円滑な」道路交通社会を構築することが目標に掲げられている。

自動運転車を完全実現するためには、技術面以外にも法令面や制度的しくみ、国際標準の策定など、解決すべき課題が多く残されている。

海外では公道での自動運転実験が広く実施されてきたが、日本でも実用化に向けた仕組みづくりが本格化してきた。例えば、警察庁は、自動運転システムの公道試験を行おうとするメーカーやサプライヤー向けのガイドラインを策定しており、今後の動きが注目される。(ZUU online 編集部)