海外,名経営者
(写真=The 21 online)

海の向こうにはスゴいヤツらがいた!

スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)

ジョブズほど個性的で、カリスマ性があり、世界中の人びとの生活に大きな影響を与えるイノベーションを生み出し続けた経営者は、古今東西いないのではないだろうか。「この大バカ野郎が! 何一つまともにできんのか」などと社員を怒鳴りつけながら、マッキントッシュやiPod、iPhoneなど、数々の革新的な製品を世に送り出せたのはなぜだったのか。

ジョブズのもとでマッキントッシュの開発などに携わり、2002年にはアップル副社長に就任したバド・トリブルは、「スティーブには、現実歪曲フィールドがあるんだ」と言う。現実歪曲フィールドという言葉は『スター・トレック』の「タロス星の幻怪人」という話から取ったもので、要するに、不可能な現実を捻じ曲げて可能にしてしまう力があるというのだ。

「無理だ。不可能だ」とエンジニアが言っても、その目をじっと見ながら話し、目をそらさせないことで、自分がほしい反応を手に入れてしまう。iMacの開発では、できない理由を38個挙げてきたエンジニアに対して、「いや、これはやるから。CEOは僕で、その僕ができると思うからだ」と応じたという。

ジョブズは、日常生活のルールについても、意に沿わないことは無視した。障害者用のスペースにも駐車したし、愛車のベンツにはナンバープレートをつけなかった。カリフォルニア州の法律では新車にナンバープレートを取り付けるまでに6カ月間の猶予が与えられている。ジョブズは、リース会社と話をつけて、6カ月ごとに新車に乗り換えることにしたのだ。

23歳のときに恋人のクリスアン・ブレナンとの間に娘リサができたときも認知をせずに無視し、母子は生活保護を受けて生活した。

このようにエキセントリックなエピソードには事欠かないジョブズだが、単なるパワハラ上司だったわけではない。「優れた人材を集めれば甘い話をする必要はない。そういう人は、すごいことをしてくれると期待をかければ、すごいことをしてくれるんだ」と語っている。

その信頼は社員にも伝わっており、たとえばマッキントッシュ開発チームの一員だったビル・アトキンソンは部下に対して、ジョブズの「くだらない!」という物言いは「これがベストなのはなぜか説明してみろ」と翻訳して聞くように、と指示していたそうだ。

《参考文献》ウォルター・アイザックソン(井口耕二訳)『スティーブ・ジョブズ』講談社