資産形成の方法として、不動産投資が注目されています。2008年のリーマンショック以降、不動産市場は低迷し、長い「冬の時代」に突入しました。しかし、2012年に誕生した安倍内閣の経済政策「アベノミクス」や、2013年に招致が決定した2020年東京オリンピックなどのおかげで、長い停滞期から脱出し現在では都市部を中心に不動産価格の上昇傾向が続いています。
「現物」である不動産への投資は他の金融商品への投資とは異なり、事業家としての視点や資質が問われます。そこで今回は、不動産投資を「事業」として考えるべき理由を、他の金融商品への投資と比較しながら考えてみます。
1. 不動産は買って終わりではない
不動産投資と他の金融商品への投資で最も違う点は、不動産投資が「購入したらそれで終わり」ではないということでしょう。
もちろん、配当収入に期待する金融商品は他にもあります。しかし、多くの場合は売却益が狙いです。投資家として重要なのは、利益が最大化するタイミングを見極めて、株や為替などの金融商品を売却することであり、株主として投資先の経営に口を出したり、手助けをしたりすることではありません。
また、一定以上の規模で上場株などを所有していれば、株主総会で議決権を行使することもあります。ですが、機関投資家などの大口投資家ならいざ知らず、個人が行う投資の範囲ではごく稀でしょう。
しかし、不動産投資は異なります。主な収益は売却益よりも、家賃収入やテナント収入などのインカムゲインです。これを得るために投資家であるオーナーには、入居者を見つけて、空室率を減らすという「経営」努力が求められています。
物件の清掃やクレーム対応といった様々な日常業務はもちろんのこと、空室が出た場合の広告方法、リフォーム・メンテナンスのための予算配分など、経営的な意思決定も求められています。たいていの業務は管理会社に委任することができますが、最終的な判断と責任は投資家自身が持たなければなりません。それはまさに経営者そのものです。
2. 求められるマーケティングセンスと開発力
不動産購入後に始まる経営や日常業務(オペレーション)は大切です。しかし、不動産投資では、どのような物件を、どのような目的で買うのかという、もともとの事業計画で、その結果は大きく異なります。例えば、「古くて安い中古物件を購入して、リノベーションを行い、人気物件に生まれ変わらせる」というのはそのひとつです。個人向けの住宅をシェアハウスに切り替えたり、「事務所利用可」としてオフィス需要を掘り起こしたりする事もあるでしょう。
このように不動産投資では、規模の大小に関わらず「開発」という目線で事業計画を立てて、購入した物件が最適なパフォーマンスを示すようにマーケティングを行うことが必要で、これらは金融商品への投資にはない特性です。
3. キャッシュフロー経営が必要
不動産投資では、物件を現金で一括購入することは少ないでしょう。多少の頭金は入れるにしても、たいていの場合、購入する不動産を担保として金融機関からお金を借り、毎月の家賃収入でローンを返済します。不動産投資ではレバレッジ効果が働きます。頭金として投じた現金をはるかに超える不動産を獲得することができます。
他の金融商品でも、FXや信用取引などでは、レバレッジ効果を活用できます。しかし、これらは短期的で、長期間に渡り、レバレッジ効果を活用するケースはあまりありません。
そのため不動産投資家は、より有利な条件でローンを組む方法を考えるとともに、返済計画と合わせてキャッシュフローを考えた経営に取り組まなければなりません。これは事業経営者が、銀行から融資を受ける際にする努力と同じ種類のものです。
不動産投資には「デッドクロス」という言葉があります。不動産投資のリスクの中でも、一番注意しなければならないと言われています。デッドクロスとは簡単に説明すると、不動産投資の経費の中で大変重要な役割を果たす減価償却費とローンの元金返済額のバランスが逆転してしまう事です。
ローン返済の利払い分は経費として計上できますが、年々返済が進むと、利払いの額が減り、相対的に元金の部分が多くなります。そのうちに経費計上できた利払いを、リアルにキャッシュアウトする元金返済が上回る瞬間がきます。これが「デッドクロス」です。何が起きるかというと、減価償却費による所得税の節税効果が無くなる上に、キャッシュだけがどんどん減っていくことになります。帳簿上では利益が上がっているのに、キャッシュが足りなくなって倒産するという、いわゆる企業の「黒字倒産」のような現象が起きかねません。不動産投資では、キャッシュフローを意識した経営を常に心がける必要があるのです。
4. 経費をうまく利用する
また、不動産投資では、不動産の管理・運営に関連した出費が他の金融商品よりもはるかに大きくなります。個人で確定申告する場合、白色か青色かによる違いもありますが、様々な経費を計上することが可能で節税しやすい側面があります。中でも減価償却費は重要です。不動産の建物部分や設備の法定耐用年数に応じて年ごとに経費として計上することになりますが、計上の仕方が収益に大きな影響を及ぼします。裏を返せば、経費の扱いをコントロールする余地が不動産の投資家にはあるというわけです。これもまた、不動産投資が「事業」であり、不動産投資家が「経営者」であると言われる理由のひとつです。
まとめ
さて、不動産投資が「事業」だと考えるべきポイントについてお伝えしました。こうした特性を「面倒だ」と感じる人もいれば、逆に「やりがいがある」と思う人もいるでしょう。長期に渡って利益を生みだす事業と考えれば、経営者の努力次第で、利益は増えたり減ったりします。ご自身で不動産投資を良く研究し、実りのある資産形成に取り組んでみてはいかがでしょうか。(提供: TATE-MAGA )
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