イタリア語で500を意味する「チンクエチェント」。日本ではフィアット500として販売された人気車種だ。映画「ローマの休日」や「ルパン三世」でもおなじみのクルマである。特にルパン三世の愛車で知られる2代目フィアット ヌォーヴァ 500のビジュアルは、3代目に受け継がれ、2008年には日本でも販売が開始されている。
小さくてコロンとした愛らしい姿と小気味良い走りで、女性にも人気のあるフィアット500。特別仕様車も数多く発売されており、4月16日には200台限定の「フィアット500 スーパーポップ アモーレ」が発表された。
そんなフィアット500は中古車市場での人気も高く、高値安定が続いていたが、ここにきて値下がりが目立ち始めている。人気車種だったフィアット500が、いまなぜ値下がりしているのだろうか。
支払い総額で100万円割れも
中古車情報サイトでフィアット500を検索してみると、確かに支払い総額で100万円以下のものも散見される。100万円以下の年式と走行距離を見ると、2008年物でおよそ6万kmが多く、10万km超えで80万円前後も見られる。
2008年物の購入者にとっては、車検サイクルが3回目を迎える時期でもある。1976年に乗用車の平均車齢は3.5年だったが、2015年には8.3年まで拡大しており、時期的にも買い替えのタイミングを迎えていることが、中古価格が値下がりしている理由の一つであろう。
発売以来、グローバルベースで累計150万台を売り上げたフィアット500だが、日本市場でも毎年4000~4500台の販売を記録している。2012年に車体を大型化した「フィアット 500L」、広い居住空間とアドベンチャーの雰囲気を持つ「500L トレッキング」、シリーズきっての機能性の高さを誇る「500L リビング」など、500シリーズのラインアップは拡大の一途だ。年々供給量が増加していることも、価格を押し下げた要因といえる。
また、2015年に新型フィアット500が登場したことも影響している。見た目はあまり変わらず、ファンでないと分からないほどだが、新しいボディカラーやアクセサリー、1900個のパーツが変更され、ハンズフリー化も進んでおり、便利に生まれ変わった新型を求めたいというファンも少なくないだろう。ちょうど買い替え時期も相まって、乗り換え需要が増えたことも、少なからず影響している。
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故障しやすい? イタリア車の都市伝説
輸入車の中でも、イタリア車は特に故障しやすい――この説は、半ば都市伝説化しているようだ。フィアット500に関しても、日本に登場した頃は「エンジンがかかっているにも関わらず、ギアがどこにも入らず、止まってしまった」などという話もあったが、現在はそうした声も聞かれなくなった。警告灯が異常もないのに反応してしまう、メーターパネルのライトがつかなくなってしまう、など、走行に支障をきたさない程度の事象が報告されているのが大半なようだ。
中古車の故障は、フィアット500だから、また、イタリア車だからこれが起きるというセオリーのようなものは、存在しない。個体差が大きいので、一台ずつ、自分で確かめていくほかはない。ただし言えるのは安いクルマには何か理由があるはずである。走行距離が長い、供給量が増大したなど、納得できる理由があれば良いのだが、ショップの人に聞いてもはっきりした回答が得られない場合は、注意が必要だ。
初めてのイタリア車で不安がある場合は、正規ディーラーの販売店で購入する方が、多少値段は高くとも安心できるだろう。また、最近では中古車情報サイトでも、保証がついているものもある。その点を理解して購入し、信頼できる技術をもった整備体制を有するショップであれば、安心して楽しいイタリア車生活を満喫できるはずだ。(モータージャーナリスト 池谷真子)
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