コンピューターで作り出された仮想の世界を、あたかも現実のように体験できる仮想現実(VR)。
「VR元年」と言われる2016年には、ゴーグルのような形のディスプレーとなるソニー <6758> のプレイステーションVRや、米IT、SNS大手のFacebookの傘下になったOculusから「Oculus Rift」が発売されるなど、ゲーム分野でのVRの展開が加速するとみられており、ビジネスの現場にも大きく影響するのではないかとみられている。
特に注目されるのは、VRの「働き方」への波及効果だ。職場での働き方の大きな部分を占めている会議のあり方も、VR化するかもしれない。そんな見方も出てきており、VR時代の働き方の誕生も視野に、最新のVRの動向をおさらいしながら、「VR時代の働き方」を覗き込んでみよう。
仮想現実による「会議室」補完計画
現在、法人(B2B)市場では、インターネットを介し、マルチデバイスで利用できるテレビ会議サービスが急激に普及してきている。カメラを利用したビデオ会議システムや、タブレットやスマートフォンで資料を共有しながらオンライン会議を行うようなシステムも同様だ。
かつてのイメージでは、会社の会議室に大勢が集まるスタイルだろう。一つの部屋に関係者らが集まって、情報を交換したり、意思決定についての議論を戦わせたりするのが典型的といえるだろう。反対に現在では、インターネットなどで複数の参加者がつながり、それぞれが遠隔地にいながらも、コミュニケーションを行えるようになっている。
他方で、VRがより普及すれば、会議室やオンラインで行う会議を“仮想空間で行う”ことになるかもしれない。ITやデジタル技術を駆使して作られた世界に身を置きながら、会議に参加できるかもしれないということだ。現在の会議室に集まって行う会議や、オンラインの会議も、ともすれば、「VR会議」にとって代わられるかもしれないということだ。
「VR会議」がある未来
「VR会議」を後押しするのが、リモートワーク(遠隔就労)を後押しする流れだ。労働人口の減少への対策や女性も活躍する社会といった目標の実現に向けて、企業や行政機関も、リモートワークを実現すべく、動いている。その中で、「VR会議」を活用すれば、より円滑な就労環境を作り上げられるかもしれないのだ。
現時点では、ゲーム、エンターテインメントといったコンシューマー市場向け製品・サービスが主流のVRだが、今後、VR会議室を作り出すことも可能とみられるているのだ。「VR」で作った仮想会議室に参加するワークスタイルが当たり前の時代になる日はそう遠くないかもしれない。そんな空想も膨らんでくる。
具体的な、大企業の取り組みも始動している。マイクロソフトリサーチは、VRグラスと3D映像伝送技術を利用したデモンストレーションを公開。人体の3Dモデルをリアルタイムで作成し、3Dモデルと撮影した映像を伝送しながら、遠隔地にいる人でもあたかも同じ部屋にいるかのごとく対話できる仕組みを構築している。
ほかにも昨年5月、360度の視界を実現するVRシステムで米・GoProとの提携を発表したGoogleは、今年に入ってVR部門を新設した。Facebookは、ゴーグル型VRヘッドセット「オキュラス・リフト(Oculus Rift)」を開発・提供するオキュラスVR(Oculus VR)を傘下に収めている。
両社がVR分野に本格参入して、今後、コンシューマー市場からビジネス市場への拡大を図っていけば、VR会議システムのイノベーションが一気に進む可能性がある。
また米国のスタートアップ企業・AltspaceVR(オルトスペースVR)は、世界中の人々が一緒に映画やスポーツを視聴したり、講義や会議に参加したりできる共有型のVR空間を提供するサービスを正式に立ち上げた。同社は、サードパーティ向けのソフトウェア開発キット(SDK)もリリース済みだ。
会議室そのものをVRで再現し、世界中から会議の参加者が集って議論したり、プロトタイプをVRで再現させながら、みんなで討議して新製品を開発したりする動きが、日本でも本格化することを期待したい。(ZUU online 編集部)