未婚化,少子化
(写真=PIXTA)

はじめに

「生涯未婚率」という統計上の言葉がある。

単に「未婚率」であれば、結婚していない男女の割合であろうというなんとなくの予想はできるが、生涯未婚率、となると初耳という人も少なくはないだろう。

生涯未婚率は、一生涯未婚である人の割合を計算した数値ではない。そうではなくて、ある測定時点において「50歳で1度も結婚経験がない人の割合」を計算した、統計上の数値である。

簡単に表現すると「一生涯独身である可能性が高い人の割合」という統計上の指標となる。

日本において未婚化が進行してきていることは、メディア等で知られるところである。しかしその実態を正確にデータで把握している人は多くはないだろう。

婚外子比率が数パーセント台である日本においては、結婚は出産への最初の関門であり、つまり未婚化の進行はそのまま少子化社会の進行へとつながってゆく。

本稿では、未婚化の進行・未婚化の背景となる未婚者の意識を国の大規模データで把握するとともに、その進行をせき止めるため不可欠な「社会の姿勢」について考察してみたい。

男性に顕著な未婚化現象

まず日本の生涯未婚率はどのようになっているのか、図表1で見てみたい。

5年に1度の国勢調査に基づいて計算されるため、直近のデータは2010年となっているが、男性の生涯未婚率は20.14%、女性は10.61%である。今の日本では、男性の5人に1人、女性の10人に1人が生涯未婚である可能性が高い、ということが示されている。

生涯未婚率は、特に男性で急上昇してきている。1980年には2.60%であったのが、1990年には5.57%、2000年には12.57%、そして2010年には20.14%と、実に30年前の10倍に一生涯独身である可能性の高い男性が増加しているのである。

一方、女性は1980年には4.45%で男性を上回っていたものの、そこまで割合が増えてはいない状態にとどまっている。

50歳男女のそれぞれの人口はそこまで差がない(2010年国勢調査ではともに400万人程度)とすると、50歳になった時点で、女性生涯未婚者の倍の人数の男性生涯未婚者がいるということになる。つまり、一生のうち、複数回結婚している男性が以前よりも増え、一方で、全くしない男性の割合が増えたということであろう。

結婚しないという選択肢自体は否定されるものでは全くないが、結婚したい男性にとって「結婚経験の格差社会」が生じてきている、と言えるのではないだろうか。

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結婚したい時には相手がいない-キリギリス的結婚活動

1度も結婚経験がない人の割合が日本で急増していることは、「個人のライフプランの変化の問題」として手放しで容認していいことではあまりないかもしれない。なぜなら未婚者の9割(2010年男性86.3%、女性89.4%(*1))が「結婚するつもり」であると国の調査で回答しているからである。

つまり希望が実現しないまま50歳を迎える男女が急増してきている、と見ることが出来る。希望が叶わなくなりつつあることを示す社会現象を、個人のライフプランの問題、とみなしてしまうのはあまりに乱暴である。

では、どうして男女ともその9割にものぼる結婚希望が叶わなくなってきているのであろうか。

上記の国の調査の中に18歳から34歳の未婚男女が「独身にとどまっている理由」(3つ選択)を回答した結果がある(図表2)。これによると、およそ高卒から大学院卒にあたる年齢の18歳から24歳の場合、男性では「まだ若すぎる」が理由のトップ(47.3%)であった。2位の理由の「まだ必要性を感じない」(38.5%)も「若すぎると思っている」からこそでてくる回答といえるだろう。

一方、同年齢の女性でも「まだ若すぎる」が理由のトップであり(41.6%)、やはり僅差で「まだ必要性を感じない」40.7%が並ぶ。高卒から大学院卒にかけての年齢の男女は「まだ若すぎるから」独身でいるのだ、と思っている割合が極めて高い。

ところが、この「独身にとどまっている理由」が25歳から34歳の男女とも一般的に学生である状態ではいられなくなる「就業必須年齢」に達した途端、一変する。

「就学可能年齢」だった時のトップ理由の「まだ若すぎる」が、男性で6.5%、女性で2.7%にまで急落する。

そして、「就業必須年齢」に達した独身男女の「独身のままでいる理由」のトップがともに「適当な相手にめぐり会わない」に変化する。男性では46.2%、女性では51.3%と、断トツのトップの理由となる。

上記の独身理由の急激な変化からは、自らが一般的に就学者(学生)の多い年齢であるうちは「まだ若いから」と思って先延ばしにしていたが、「就業必須年齢」に移行した途端、大慌てで相手探そうと考えるも相手が見つからないでいる、という極端とも言える男女の結婚活動の様相が見えてくる。

残念なことではあるが、童話「アリとキリギリス」でいうところのキリギリス的行動パターンともいえるかもしれない。

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(*1)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」
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