「うわっ、危ない!」
駅前の歩道を歩いていると、真横をかすめるようにスピードを出した自転車が通りすぎてビックリしたことはありませんか?
自転車は車両です。「自転車通行可」の標識がある場合、または13歳以下70歳以上の場合、安全のためやむを得ない場合等を除いて、基本的に車道を通らなくてはいけません。
2013年に公布された改正道路交通法では、下記の通り、自転車のルールが厳しくなっています。
【夜間の無灯】
5万円以下の罰金
【信号無視】
3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金
【飲酒運転】
5年以下の懲役または100万円以下の罰金
【安全運転義務違反】
自転車走行中の携帯電話、イヤホン使用、傘さし運転も5万円以下の罰金
いかがですか。あなたも、ついついしてしまいそうな事が含まれていませんか? しかし、それがヤバイのです。
自転車の対人事故が増えている理由とは
なぜ、こんなに厳しくなっているのでしょうか? その背景には交通事故のおよそ2割は自転車によるもので、中でも歩行者との対人事故が増加していることが指摘されます。そして、その対人事故が自転車に乗る人の「マナーの悪さ」に起因するケースが少なくありません。
最近も自転車を制止しようとした警官に、何と猛スピードで突っ込んで死亡させたという事件がありましたね。
賠償額の判決が1億円のケースも!
自転車だから大きな事故にはつながらない……と思いがちですが、違反すると刑事責任もありますし、民事事件にもなることをご存知でしょうか。例をあげてみましょう。
【9521万円の賠償額】 男子小学生が夜間、自転車で走行中に62歳の女性と正面衝突、女性は意識が戻らない状態になった(2013年の神戸地裁の判決)
【9266万円の賠償額】 男子高校生が昼間、車道を斜め横断、対向車線を自転車で走行していた24歳の男性と正面衝突。男性は言語機能の喪失の後遺症が残った(2008年東京地裁の判決)
このように、1億円近い賠償金を支払わなくてはいけないケースもあります。自転車だからといって甘く見てはいけません。未成年が起こした対人事故の賠償金は、親が支払うことになります。ですから、自転車に乗る人は、主婦・子供を含めて自転車保険に入っていた方が安心と言えるでしょう。
自転車保険にはどんな保険があるの?
自動車やバイクなどは、すべて自動車損害賠償責任保険(自賠責)に強制的に入ることが義務づけられていますが、自転車にはそれがありませんでした。しかし、1億円の判決以降、自転車保険が各社から発売されています。
▽au損保の自転車保険Bycle
年額保険料:4150円 補償額1億円 ファミリー年額保険料:9660円
▽コープの団体じてんしゃ保険
家族全員年額保険料:5140円 補償額1億円
▽三井住友住友海上 自転車向け保険
年額保険料:3990円 補償額:3億円 ファミリー年額保険料:7210円
自転車保険に入るときの注意点は?
自転車保険の補償内容は、大きく分けて2つに分かれます。一つが、日常生活で起こった相手のケガや物を壊した場合に補償される個人賠償責任保険。もう一つが、自分のケガに対する補償の障害保険・医療保険です。
自転車保険で注意する点は、交通事故に限って補償される場合があることです。また、ひとり一人を対象としている保険なので、家族で自転車に乗る人が複数人いる場合は、ファミリーで入る必要があります。
補償額は最低でも1億円をつけておきましょう。加えて、示談サービスや弁護士費用もつけておきたいところです。
自転車に付いている保険「TSマーク」とは?
自転車のフレームに「TSマーク」というシールが貼ってあるのを見たことはありますか? このシールは、自転車安全整備士が点検した自転車のみに貼られるものです。
TSマーク(有効期間中)が貼ってある自転車に搭乗している人が事故を起こすと、青色TSマークは最高1000万円、赤色TSマークは最高5000万円の補償があります。入院の場合は、青色TSマークは1万円、赤色TSマークは10万円の入院見舞金が出ます。ただし、充分な補償とはいえません。
自転車保険よりもっといい保険!年間2000円で1億の補償
実は、自転車保険よりもっと安い保険があります。自動車保険や火災保険、傷害保険の特約としての個人賠償責任保険で、年間保険料は約2000円。家族全員に対して1億円の補償があります。
この個人賠償責任保険は、単独では加入できませんが、適用範囲は広く、「2階のベランダに置いていた植木鉢を落として、下で歩いていた人にケガをさせた」「マンションで、洗濯機のホースが外れていて、下の階に水漏れをしてしまった」「駅の階段を踏み外したとき、後ろにいた高齢者を巻き添えにしてしまい、ケガをさせた」「喫茶店でコーヒーをこぼしてしまい、隣の人のパソコンに損害を与えた」「飼い犬を散歩中に、子供に噛みついてケガをさせた」などなど、自転車事故だけではなく、偶発的な事故も損害賠償の対象となり補償されます。
ヤバイ事態に備える保険は、絶対に入るべき!
ただし、自動車保険の特約にも注意すべき点があります。自動車保険は通常1年更新ですので、毎年この特約を更新しなければなりません。もし保険会社を変えた際にはお忘れなく。また、自動車を手放してしまうと、この保険もなくなってしまいますので、注意が必要です。
火災保険の特約でつけた場合は、比較的長期の契約になるので、うっかり契約が切れていたということは少ないでしょう。
個人賠償責任保険だけだと、自転車保険についている傷害保険の部分に関しては、補償がありませんが、医療保険に入っている場合は、それでカバーができるはずです。補償をダブらせる必要はありません。
この個人賠償責任保険は年間2000円という1億の補償が得られるので、コスパのいい保険です。とはいえ、マナーを守ってヤバイ!という事態にならないのが一番いいのですが、万が一の時のために備えておきましょう。
長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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