英国のEU(欧州連合)離脱決定直後に一時、1ドル=99円まで急激に進んだドル・円相場の「変化点」を探る動きが台頭している。

金融市場の安定化を図るため、27日に「政府・日銀緊急会合」が開かれ、安倍首相は円売り介入も辞さない強い姿勢を打ち出した。28日には自民党の「EU問題緊急本部」が初会合を開催。金融市場の動揺が収まらないと、7月10日投開票の参院選にも響くという政治判断から、7月初めにかけて政府・与党内に円高対策や大型補正予算論議が活発化する可能性が高い。

そうした動きや欧州の動向、7月1日発表の日銀短観、7月28~29日の日銀金融政策決定会合をにらみつつ、ドル・円相場は着地点を模索していくだろうが、一つ見逃せないのは有力テクニカルアナリストの間で浮上している為替の「過剰反応」論だ。

52週線マイナスカイ離率、8年ぶりの記録的高水準

SMBC日興証券の吉野豊チーフテクニカルアナリストは、円急伸で「52週移動平均線とのカイ離率は6月24日に一時、マイナス15%まで逆カイ離が拡大した」と27日付リポートで指摘。2008年のリーマン・ショックや1998年のLTCMショック当時の大波乱局面を越えたことで「明らかに行き過ぎの領域に入り始めている」という。

52週線からのマイナスカイ離率は99年1月に14.7%、08年3月に14.1%、08年12月に14.1%までそれぞれ拡大したところでピークアウトしている。短期的にはなお不安定な動きが続くにしても、8年ぶりとなる今回の記録的カイ離率は、先行き"潮目"が変わる可能性を示唆しているだけに、そろそろ状況変化に備えておきたい。

トヨタ、長期仕込み場に

28日の東京株式市場では上場銘柄で最も為替感応度が大きいトヨタ自動車 <7203> が一時、前日比234円安の4917円まで下落。14年4月に付けた5205円安値を割り込んで、13年4月4日以来の5000円台割れ。15年3月高値8783円からの下落率は44%に達した。

だが、28日の安値時点でPBR(株価純資産倍率)は0.89倍、予想PERは10.01倍に低下(今3月期の1株利益は会社側予想で490.51円)。今期の配当計画を同社は開示していないものの、仮に前期と同じ年間210円とした場合、配当利回りは4.2%となる。円高の影響で業績や配当には下押し圧力が働くにしても、長期的視点からは魅力的な仕込み水準に到達したとみていい。

なお、東証1部上場銘柄の平均予想株式益回りは24日に7.40%に向上。12年11月15日にアベノミクス相場がスタートする2週間前の同年11月1日(7.35%、当日の日経平均は8946円)以来の高水準に達し、現在もその近辺にある。(6月29日株式新聞掲載記事)

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