ウイスキーが新たな投資対象に
嗜好品投資の代表といえば、絵画やワイン、クラシックカーなどがあるが、近年、新たな投資対象として仲間入りしたものがある。それがウイスキーだ。ロンドンにウイスキー投資の市場が誕生し、富裕層を中心に投資家が増えている。 従来、スコッチウイスキー業界のみで取引されてきたウイスキーだが、どのようにして投資が可能になったのか、また、どのような魅力があるのか、紹介しよう。
蒸留所には2兆円の価値の原酒が眠る?
2015年、ロンドンのシティに新たな誕生したのが、ウイスキーの原液の投資市場だ。ウイスキーの中でもスコッチは、少数のメーカーと業界関係者のみが取引してきた特殊な世界で、個人が気軽に参加できる市場がなかった。そこに風穴を開けたのがウイスキー・インベスト・ダイレクト社だ。
ウイスキーは仕込んでから販売するまで、最低でも3年、長ければ12年以上、平均で9年ほど熟成させる。スコットランドの蒸留所で熟成中の原液だけでも、150億ポンド(約2兆円)の価値があるそうだ。将来、売上がある程度確実に見込める嗜好品であり、ファンドに組み込む商品としての適性も備えている。同社はそこに着目して市場を立ち上げた。
メーカーにとっては資金調達を多様化するメリットや、景気状況により左右される出荷調整を行えるメリットがある。投資家は権利だけを買うので、実際に所有するのはメーカーであり、蒸留所だ。購入後も原酒は、製造元で引き続き保管されるため、品質が保証される。熟成期間にかかるウイスキー原酒の保管料は、その製造元へ支払われ、製造元のファイナンスを助ける仕組みだ。
投資家にとっての魅力は、高利回りの金融商品というだけでない。今まで関係者以外には入手しづらかった、ウイスキー原液を手軽に入手できる。これにより、新たなブレンドウイスキーを生み出すことも可能になる。
スコッチウイスキーというと、一部の蒸留所によるシングルモルトが有名だが、モルトとグレーンを合わせたブレンデッド・ウイスキーが、市場の90%を占めている。ブレンドこそがウイスキーの鍵を握る。モルトは、80〜90種類が市場で流通しており、メーカーは融通し合っていたようだが、今後は新しいブレンドの新興メーカーが登場してくるかもしれない。
個人投資家が市場に参入する場合、一口5000ポンド(約70万円)から投資ができる。これなら個人でも手が届く範囲だろう。