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(写真=Thinkstock/Getty Images)

喜多川歌麿の浮世絵が史上最高額となる8800万円で落札されたと聞いて、この価格を高いと感じるだろうか。それとも妥当だと考えるだろうか。

日本美術の中でも人気のある浮世絵、ファンも多いが、美術品投資としての観点で見てみたい。

富裕層は絵画が大好き

西洋絵画は富裕層の投資対象として地位が確立されている。オークションでの過去最高落札額は3億ドル(約315億円)で、2015年1月に落札されたゴーギャンの「ナフェア・ファア・イポイポ」と15年9月のデ・クーニングの「インターチェンジ」の2点だ。

「インターチェンジ」を落札したのはケネス・グリフィン氏で、米ヘッジファンド大手であるシタデル・インベストメントの設立者で現CEOだ。グリフィン氏は、米フォーブス誌が発表する2015年のヘッジファンドの報酬ランキング1位。年間なんと17億ドル(約1785億円)を稼いでいる。このランキングでも常連の大富豪グリフィン氏にとってはどうということのない買い物なのかもしれない。

ZOZO TOWNを運営するスタートトゥデイ社長でタレントの紗栄子さんと交際中との噂の前澤友作氏が16年5月、ジャン=ミッシェル・バスキアの「アンタイトルド」を5728万5000ドル(約60億円)で落札したことが話題になった。

海外でも日本でも、富裕層にとっては西洋絵画は人気だ。西洋絵画が投資に向くのは、有名な絵画を所有しているという満足感と、目利き次第では絵画が長期で何倍にもなることがあり得る長期的期待値の高さからだ。

日本のバブル時にジャパン・マネーが世界の絵画を買いまくっていたことはご存じだろうか。1987年、ゴッホの 「ひまわり」を安田火災海上保険が58億円で落札。1990年には、 ゴッホの 「ガシェ博士の肖像」 を当時過去最高の落札価格125億円で、ルノアールの 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」 を過去2番目の119億円で、当時大昭和製紙名誉会長の斉藤了英氏が落札した。ジャパン・マネーが世界で話題になっていた頃だ。

有名絵画は、どこかで好景気があれば、その国の富裕層が買い手となってでてくるのだ。米国では、リーマンショック後史上最長の8年間の景気拡大が続いている。アジア、特に中国、インドといった新興国では新たな富裕層も増えてきている。有名絵画の買い手はまだまだ現れそうだ。

日本の浮世絵は投資対象としてどうなのだろうか。

投資アイテムとしては人気がない浮世絵

2016年6月22日に、パリで行われたオークションで、喜多川歌麿の浮世絵の版画が74万5000ユーロ(約8800万円)で落札された。浮世絵としては過去最高の値段だ。それまでの最高額は、2009年の東洲斎写楽の役者絵「嵐竜蔵の金貸石部金吉」で、39万6545ユーロ(約4700万円)だった。

浮世絵は、ゴッホなど印象派の巨匠たちに影響を与えたとされている。日本のみならず、世界的にファンやコレクターが多い浮世絵ではあるが、西洋絵画に比べると落札額の桁が違っている。

浮世絵が投資対象として高騰しない最大の原因は保存の難しさだ。浮世絵は顔料が退色しやすく、印刷当時の色を残すものは稀である。そもそも保存がいいものが少ない上、将来の管理を考えるとなかなか展示しておくわけにもいかない美術品なのだ。展示しにくいとなると、美術品としては投資家の人気は下がらざるをえない。

また、浮世絵は木版による版画だ。もともとは庶民むけに刷られた美術印刷物であり、元値は蕎麦一杯の値段だったと言われている。元値が安い上に何枚か刷られた印刷物ということで、コレクション自体は膨大にある。

浮世絵は日本以上に海外で評価されており、多量の作品が日本国外に渡っている。ボストン美術館には5万点、プーシキン美術館には3万点など、欧米の美術館だけで20万点以上は収蔵されている。数はあるのに、保存が難しいこともあって、市場に出てこないのだ。

ボストン美術館はなぜすごいコレクションを持っているのだろう?