世界で人気の浮世絵 その投資的価値は
2016年6月22日、パリで行われたオークションで、喜多川歌麿の浮世絵の版画が74万5000ユーロ(約8800万円)で落札された。浮世絵としては過去最高の値段だ。それまでの最高額は、2009年の東洲斎写楽の役者絵「嵐竜蔵の金貸石部金吉」で、39万6545ユーロ(約4700万円)だった。
この額を聞いて、どう思うだろうか。世界的に人気が高い浮世絵だが、有名な西洋画が数十億以上で取引されるのに比べると、かなり低く感じる。
なぜ、浮世絵は価格が低いのか。その投資的価値はどうなっているのだろうか。
富裕層は絵画が大好き
西洋絵画は投資として地位が確立されている。オークションでの過去最高落札額は4億5000万ドル(約億円)で、2017年11月に落札されたレオナルド・ダビンチの「サルバトール・ムンディ」。2番目は2015年1月に落札されたゴーギャンのナフェア・ファア・イポイポ」と15年9月のデ・クーニングの「インターチェンジ」の2点だ。(2017年現在)
「インターチェンジ」を落札したのはケネス・グリフィン氏で、米ヘッジファンド大手であるシタデル・インベストメントの設立者で現CEOだ。グリフィン氏は、米フォーブス誌が発表する2015年のヘッジファンドの報酬ランキング1位。年間なんと17億ドル(約1785億円)を稼いでいる。このランキングでも常連の大富豪グリフィン氏にとってはどうということのない買い物なのかもしれない。
また、日本ではZOZO TOWNを運営するZOZO社長の前澤友作氏が16年5月、ジャン=ミッシェル・バスキアの「アンタイトルド」を5728万5000ドル(約60億円)で落札したことが話題になった。
海外でも日本でも、富裕層にとっては西洋絵画は人気だ。西洋絵画が投資に向くのは、有名な絵画を所有しているという満足感と、目利き次第では絵画が長期で何倍にもなることがあり得る長期的期待値の高さからだ。
日本のバブル時にジャパン・マネーが世界の絵画を買いまくっていたことはご存じだろうか。1987年、ゴッホの 「ひまわり」を安田火災海上保険が58億円で落札。1990年には、 ゴッホの 「ガシェ博士の肖像」 を当時過去最高の落札価格125億円で、ルノアールの 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」 を過去2番目の119億円で、当時大昭和製紙名誉会長の斉藤了英氏が落札した。ジャパン・マネーが世界中を席巻していた頃の話だ。
有名絵画は、どこかで好景気の国があれば、その国の富裕層が買い手となってでてくる。米国では、リーマンショック後、史上最長の景気拡大が続いている。アジア、特に中国、インドといった新興国では新たな富裕層も増えてきている。有名絵画の買い手はまだまだ現れるだろう。
そうした西洋絵画に比べ、日本の浮世絵は投資対象としてどうなのだろうか。