そもそも現代アートとは何か
誰でも一度は、現代アートが高額で落札されたというニュースを耳にしたことがあるだろう。しかし、現代アートは難解だと感じ、なぜそこまでの値段が付くのかと疑問を持っている人も多いのではないだろうか。
そこで、そもそも現代アートとは何かという話から始め、高騰する現代アート市場の様子を簡単に紹介したい。そして、金銭的な投資で芸術の歴史を作ろうとしている富裕層の姿に迫りたい。
なぜ、現代アートは抽象的なものが多いのか
現代アートや現代芸術について確固たる定義があるわけではないが、20世紀初頭のフォービスムやキュビズム、あるいは前半のシュールレアリスムを近代アートと現代アートの境界とする見方が一般的だ。
ここでは、フォービスムやキュビズムについてまで解説はしないが、近代アートと現代アートを区別する概念で共通するのは「写実芸術の危機」だ。19世紀終わり頃からカメラが世間に広まり、写実的な絵画の存在意義が芸術界において大きな論争になった。
キュビズムやシュールレアリスムを見ても分かると思うが、その表現は視覚的写実から離れていたり、表現主体が抽象的なものであったりして、それまでの主流芸術とは様相が大きく異なる。一般的に現代アートが抽象的であるがゆえ、「難解」だと思われているが、抽象的なものが多いのは、こうした歴史的経緯がある。