テスラ,モデルS
(写真=プレスリリースより)

自動運転車が事故を起こすーー今年5月、米国でテスラモーターズ「モデルS」のドライバーの死亡事故が発生したことは記憶に新しい。今月6日には、日本の国土交通省も米国の事故を受けて「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません」との見解を発表し、注意を喚起する事態となった。

読者の中には、国交省の見解に驚かれた人もいることだろう。自動運転が「完全な自動運転ではない」とは、どういうことなのだろうか。

なぜ、自動ブレーキシステムが作動しなかったのか?

モデルSの死亡事故は、フロリダ州を縦断するハイウエイで発生した。「オートパイロットモード」で直進中のモデルSが、対向車線を左折してきたトレーラーと衝突し、ドライバーが死亡したものである。

6月30日の米運輸省発表によると、死亡事故を起こしたモデルSには長距離超音波センサーが12個搭載されていた。センサーは周囲360度にわたって半径4.8メートル以内の物体を感知することが可能とされている。

モデルSには長距離超音波センサーに加えて、フォワードレーダーやフォワードビューカメラも搭載されていたが、晴天の強い日差しがトレーラーの白いボディを認識できず、自動ブレーキシステムが作動しなかったと指摘されている。

いまさら「自動運転」は「完全自動運転ではない」と言われても…

ちなみに、オートパイロットモードは、米国運輸省道路交通安全局や日本政府が定める「ロボットカーの自動化レベル」で、全5段階(0~4)の上から3番目となる「レベル2」に定義されている。

レベル2とは「加速・操舵・制動から2項目以上をドライバーに代わり、調和して自動的に行うシステム」と定義づけられており、実質的には既存の「ステアリングアシスト付アダプティブクルーズコントロール」と同レベルとなる。

つまり、オートパイロットモードは名前こそ「オート」であるが、その実態は「完全自動運転」と呼ぶにはほど遠いシステムと言って良い。日本でもオートパイロットモードを「自動運転」と呼ぶ傾向にあるので、ユーザーが誤解するのも無理はないだろう。

そもそも、モデルSの死亡事故が発覚してから、後だしジャンケンのように自動運転は「完全自動運転ではない」と言われても納得できないユーザーも多いのではないか。モデルSの購入を検討していたユーザーなら、なおさらだ。

ようするに「自動運転」という言葉が適切ではないのだ。国交省が示す「完全な自動運転」にある「完全」の対義語は、欠如、不全、不完全である。不完全には「欠陥」という意味も含まれる。換言すれば国交省の「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません」との見解は、「現在実用化されている『自動運転』機能は、欠陥自動運転です」と遠回しに言っているようなものである。

さすがに不完全自動運転、欠陥自動運転に名称を変更しろとまでは言わないが、せめて「半自動運転」「準自動運転」といった誤解を招かない名称にすべきではなかろうか。