モデルSは「人体実験自動車」なのか?

テスラモーターズによると、米国を走る全てのクルマは走行距離9400万マイルに1回の頻度で事故が起きているという。それに対し、今回のオートパイロット搭載車は1億3000万マイルを超えて初めて事故が発生したと強調している。

加えて、同社のイーロン・マスクCEOはオートパイロットについて「パブリックベータ版」であることを表明。同時に「ユーザーはハンドルから手を離さないことに同意している」とも主張している。

だが、海外メディアではベータ版で公道を走行させたことへの批判もみられる。見方によっては、人体実験を行っているかのような印象を受けるからだ。

テスラ車の大きな特徴として、無線通信によるソフトウェアアップデートが挙げられる。PCのように、アップデートを重ねれば、さまざまな機能の改善・追加が可能で、いわば従来の自動車にはない「進化する自動車」ともいえる。

しかし、ベータ版だからといって、人の命を奪って良いことにはならない。アップデートのために人命を犠牲にすることが許されるはずはない。PCやアプリのように不具合があれば、その都度改善すれば良いという問題ではないだろう。これは人命に関わる問題なのだ。

国家戦略に誤魔化しがあってはならない

昨年10月、安倍晋三首相は「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」年次総会のスピーチで、日本を「イノベーションが次々と起こる国に変える」と述べ、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに、自動運転技術の実用化と普及を実現させる方針を明らかにした。

自動運転技術は、日本の国家戦略の柱の一つであり、そうした文脈の延長線上に国交省の「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません」との見解がある点に留意すべきだ。

私たちユーザーは、これまで以上に自動運転技術の行方を厳しい目で見つめる必要がある。今回の事故は、テスラモーターズの企業倫理を問う出来事であると同時に、日本の国家戦略にも影響を及ぼしかねない重大な「事件」なのだ。(モータージャーナリスト 高橋大介)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)