不動産投資に欠かせない知識の一つに「人口動態」があります。最新のデータから人口動態の変化を分析することは、不動産市場の動向を予測するために非常に重要です。本稿では、不動産投資を行う上でぜひとも知っておきたい、人口動態の調べ方についてご紹介します。
国勢調査や住民基本台帳に基づいて総務省がまとめた資料から読み取る
日本では、各世帯に調査員が調査票を配布し、外国人を含めて日本に3カ月以上住む人の生活実態を調査する「国勢調査」が総務省によって5年ごとに行われ、直近では2015年10月に実施されました。この国勢調査の集計結果や、住民基本台帳(住民票を市区町村ごとにまとめたもの)に基づいて行っている人口調査などをもとに、毎月の人口の動きを含めた現在の人口を毎月1日に算出したものが「人口推計」です。
人口推計には、外国人も含めて各年代の人口が記載されています。日本の人口減少社会「元年」は2011年といわれており、1月20日に公表された最新の総人口(概算値、確定値は5カ月後に公表)は1億2682万人で、前年同月に比べて19万人減少したことが明らかになりました。ただし、外国人住民の割合は高い伸びを示しています。
将来を担う15歳未満の年少人口や、労働力の中核をなす15~64歳の生産年齢人口が減少傾向にあり、今後の住宅需要にも大きな影響が及ぶと予測されます。一方、65歳以上の人口は前年同月比で91万2千人増の3372万3000人とその増加の勢いはとどまらず、今後も病院や高齢者施設などの需要がより一層高まっていくと考えられます。
また、総務省では、全国の移動状況(日本人移動者)を記した「住民基本台帳人口移動報告」も公表しています。2015年の報告によると、都道府県別の転入・転出超過数で転入超過となっているのは8都府県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県)で、東京都は4年連続の増加です。
市町村別では、東京都特別区部、大阪府大阪市、福岡県福岡市、北海道札幌市、神奈川県川崎市が、転入超過の上位5市町村としてランクインしました。また、東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)でみると、前年よりも多い11万9357人の転入超過となっており、以前にも増して、東京一極集中の現象が強まっていることが読み取れます。
一方、全国の市町村のうち7割以上の地域で、転出超過が起こっています。なかでも、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)と大阪圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県)は、いずれも3年連続で転出超過となっています。また、東日本大震災の被害が残る岩手県や宮城県、福島県では、前年と比べて転出超過数が増加しており、人口の流出になかなか歯止めがかからない現状がうかがえます。
国勢調査の中には、他にも不動産市場の動向を読み取る上で参考になるデータが存在します。その一つが「都道府県別人口増減率」です。
2010年実施の調査結果では、人口が増加している地域は9都府県(東京都、神奈川県、千葉県、沖縄県、滋賀県、愛知県、埼玉県、大阪府、福岡県)です。人口増加が著しい地域は旺盛な賃貸需要が見込まれますので、こういった地域に絞って不動産投資を行ってみるのも一つの方法です。なお、人口減少率は秋田県が最も高く、次いで青森県、高知県、岩手県、山形県の順となっています。
また、マンション投資とも関係が深い世帯数については、国内の世帯数は5195万504世帯で、世帯人員が3人以下の世帯は増加、4人以上の世帯は減少傾向にあり、1人世帯が1678万5千世帯と最も多いことが分かりました。1人世帯のうち、65歳以上の1人暮らし世帯は479 万1000人で、これは1995年以降増加傾向が続いています。このことから、1人暮らしの高齢者を対象とした物件の需要が高まることが読み取れます。