今年1月のマイナンバー制度開始からもうすぐ半年。マイナンバーの交付申請をしてすでに個人番号カードを入手した人、また申請したにも関わらずいまだ手元に届いていない人もいらっしゃることでしょう。マイナンバー制度によって私たちの生活で何が変わったのでしょうか。
運用開始から半年で変わったこと
1.各種税金や社会保険に関する書類にマイナンバーの項目が追加された
まず、昨年の年末調整から各書類にマイナンバーを記載する項目が追加されました。個人が起業する場合や会社を設立した場合に税務署に届け出る「開業届出書」や「青色申告承認申請書」、「法人設立届出書」などについても、個人や法人のマイナンバーを記載する項目が追加されました。相続税の申告書や法人税の申告書についてもマイナンバー記載欄が設けられています。
社会保険分野については、「この会社のそれぞれの従業員にはどういう家族がいるのか」を年金機構に報告する文書「扶養控除等申告書」にマイナンバー記載欄が設けられました。会社や従業員だけでなく、従業員の扶養家族全員のマイナンバーを書かなくてはいけません。
所得税の確定申告書については、来年の2月1日から3月15日までの間に提出する分からマイナンバーの記載欄が追加されます。
2.マイナンバー特需
各会計事務所や社会保険労務士事務所はもちろんのこと、各種ソフト開発会社やセキュリティ会社、システム会社は、仕様変更やセキュリティの向上に伴う特需で軒並み増収増益となりました。マイナンバーの通知カードの発送に伴い、郵送量が14年ぶりに増加。日本郵便が今年3月期の決算で純利益が472億円、前の期に比べて2.1倍になりました。封筒事業や印刷事業も特需の影響を受け、増収増益につながった模様です。
さらに意外なところでもマイナンバー効果が。今年に入って金庫が売れるようになりました。ITの知識にあまり自信がなく、現物を保管することが習慣化している高齢者が主に購入しています。マイナンバーという貴重品の管理のほか、マイナス金利でタンス預金が増加していることも影響しているようです。
また、マイナンバーを常に持ち歩いて管理したい人向けのシールが発売されたり、マイナンバーの文字をカメラで認識できるソフトが開発されたりもしています。政府も、マイナンバーの情報をスマホで読み取ることで手軽に本人確認ができるシステムの開発を目指しています。
3. 金融機関での口座開設にマイナンバーが必要
今年1月から、証券口座全般の開設にマイナンバーの開示が必要になりました。そのため、投資家の抵抗心理が働き、一部証券会社では口座開設数が減少しました。特に、ジュニアNISAについては資金の引き出しの制限や手続きの煩雑さもあいまって、あまり売れ行きが芳しくないようです。
4.マイナンバーによる詐欺も発生
マイナンバー制度開始に伴い、詐欺などのトラブルも増えています。今年1月、東海地方にお住まいの80代の女性が、国の機関を名乗る人物から「マイナンバー制度が始まるので調査のご協力をお願いします」という1本の電話をきっかけに数千万円をだまし取られる事件が起こりました。これに似た事件は昨年後半から発生し、高齢者を中心に被害が出ています。
これからのマイナンバー制度の課題
政府としては、2018年から行政情報が見られる個人向けポータルサイトが稼働し、金融機関での口座開設の際にマイナンバーの開示が義務付けられるなど、本格的に始動する予定です。しかし、基幹システムによるトラブルが発生したことで個人番号カードの交付が遅れるなど、マイナンバー制度に対して不安視されています。
かつての住民基本台帳制度の二の舞とならないよう、国民が信頼し安心できるようなシステムの構築をし、国民が本来享受すべき権利を実現できるような体制を整えていくことが、これからの政府の課題だと言えるでしょう。
鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)
税理士鈴木まゆ子事務所代表。外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。国際相続などについての記事執筆にも取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。
税理士がつぶやくおカネのカラクリ
(提供: DAILY ANDS )
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