7月26日の経済財政諮問会議で、内閣府は中長期の経済財政に関する試算を提出した。2020年度の国と地方の基礎的財政収支は5.5兆円の赤字の推計となり、1月の試算の6.5兆円の赤字から縮小した。
この試算は、2020年度の黒字化の政府目標の達成は困難であり、財政再建を加速させなければいけないという論調の根拠となってきた。
4年後の長期金利は名目GDPを下回る予想
2020年度の名目GDP成長率の前提は+3.6%から+3.9%へ、実質GDP成長率は+2.2%から+2.1%へ修正され、2019年10月の消費税率引き上げの影響を織り込んでいる。1月の試算では、名目長期金利が急騰し、名目GDP成長率を上回る推計となっていたことに批判があった。そのため、2020年度の長期金利は3.9%から3.4%へ下方修正され、名目GDP成長率を下回ることになった。
膨張する力である名目GDP成長率が、抑制する力である長期金利を上回るリフレの力が続くことがやっと織り込まれた。マーケットの感覚では、それでも長期金利の前提が高すぎると感じるところだ。成長率の前提が高すぎるという批判はあるが、財政収支の変化(改善度合い)をマクロ議論で決めるのは、この名目GDP成長率(経済・税収を膨らませる力)と長期金利(経済を抑制する力と財政コスト)のスプレッドである。
歳出と歳入の伸びを、会計的に計算するミクロ議論とは違う。成長率の前提を低くしたとしても、長期金利がより大きく低下すれば、財政収支改善のシナリオを維持することは可能だ。実際に、財政収支の改善幅とこのスプレッドには極めて強い相関関係(スプレッドの拡大と財政改善)が確認でき、緊縮財政ではなくリフレによる財政改善の根拠となっている。
デフレ完全脱却には、企業のデレバレッジ完全終了が必要不可欠
中長期の経済財政に関する試算では、2020年度における一般政府の収支は、GDP対比-2.4%の赤字となっている。
日本経済の大きな問題は、マイナスであるべき企業貯蓄率が恒常的なプラスという、異常な状態が継続していることに起因する。企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、総需要を破壊する力となっていること、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていることだ。
加えて、恒常的なプラスとなっている企業貯蓄率に対して、マイナス(赤字)である財政収支が相殺している程度なのだ。財政拡大が不十分で、企業貯蓄率と財政赤字の合計である国内のネットの資金需要(マイナスが強い、名目GDP比)が消滅してしまっていた。名目GDP成長率が持続的に3%超の拡大をしていることは、マネーが循環・拡大する力であるネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、マイナスが強い)も最低限-3%となっているはずである。
-2.4%の財政収支を前提にすると企業貯蓄率は-0.6%と若干のマイナスとなり、企業のデレバレッジが完全に終わり、総需要を破壊する力が無くなり、デフレ完全脱却の姿となってくる。