先月、ホンダ <7267> とソフトバンク <9984> がAI分野で共同研究を開始すると発表した。AI技術「感情エンジン」をモビリティへと活用するものである。
具体的には、感情エンジンを搭載した自動車が「ドライバーの感情や心理を読み取りながら成長する」というもの。ナビゲーターとしての機能はもちろんのこと、まるでドライバーと気心の知れた「相棒」のような役目も果たすようになる、という試みだ。このニュースを受けて、ホンダの株価が一時急伸する場面も見られたほどである。
次世代自動車を巡る動きは刻々と変化しているが、今回は「クルマとAI」の融合について考えたい。
あの「ペッパー」が自動車になる?
ソフトバンクが主催した「ソフトバンクワールド」の基調講演で紹介したビデオでは、クルマが運転手の少女と出会い、様々な会話や経験を重ねながら歳とともに成長し、絆を強めるストーリーが紹介された。
クルマは運転手との会話による音声データ、センサー・カメラからの画像データを活用し、AIやディープラーニング(深層学習)で成長する。いわば、人気ロボット「ペッパー」がクルマになったようなイメージである。
ペッパーがクルマになり、運転手の友人になるとすれば、夢のような話である。自動車市場は、ロボット市場よりも魅力的な市場に成長する可能性を秘めていると言えるだろう。
トヨタも「AI開発」に積極的に取り組む
AIに注力しているのはホンダだけではない。
トヨタ <7203> は、2016年初にシリコンバレーにAI研究開発拠点「TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)」を設立した。トヨタは、AIの研究に5年間で10億ドル(約1050億円)を投じると発表している。
TRIは、米国防総省出身のAIの第一人者をCEOに迎えたほか、 Google で自動運転の中心人物をヘッドハントするなど、AIのドリームチームを結成した。それまでの同社は、EVやFCVなどの環境車には力を入れていたが、自動運転などの次世代技術にはあまり力をいれていなかった。トヨタの積極的な動きは、自動車産業の転換の前兆と言えるのかもしれない。