信頼回復と採算改善に努め収益が回復

店舗政策では、地区本部制を導入して各地域特有のニーズを吸い上げるほか、15年末までに全店舗の半数近くを改装してイメージ向上を図り、注文と受け渡しのカウンターを分けて顧客サービスを強化するデュアルポイントサービスなども取り入れている。

また、採算改善にも注力している。新規出店数16に対して、15年は不採算店を中心に150以上閉鎖しており、全国の店舗数は年初の3093から年末に2956まで減少した。この中には同社の看板とも言える表参道や赤坂見附の店舗も含まれている。家賃負担が重く採算が低いためだ。今年上半期の営業利益率はほぼゼロとはいえ、これらの採算改善策と増収効果で一年前の▲21%から大きく改善している。

会社は通期の連結売上高を前年比16%増の2200億円、営業利益は同285億円改善の33億円と期初計画を据え置いたが、上振れ余地は十分にありそうだ。その大きな要因と期待されるのが7月22日に日本に上陸したスマートフォン向け人気ゲーム「ポケモンGO」効果である。

「ポケモンGO」と「円高効果」で今期利益は上振れか

同社はゲーム提供元の米Niantic, Incと株式会社ポケモンと、国内約2900店舗全てで連携する。マックの店舗がゲーム上のマップに表示され、約400店舗が他のプレーヤーのポケモンと戦う「ジムバトル」などが行われる「ジム」、残る約2500店舗の「ポケストップ」ではモンスターボールなど、ゲーム進行に必要な様々な道具を手に入れることができるという。

7月のマック既存店の売上高は前年比26.6%増、客数は9.8%増と6月のそれぞれ18.5%増、3.3%増を大きく上回った。しかもこれはゲーム提供開始から10日分しか反映していない数字だ。同社社長のサラ・カサノバ氏は決算発表の席上でポケモン効果を語るには「時期尚早」としているが、8月はほぼまるまる子供の夏休みとなるため、これらの数字がどうなるか興味津々である。

年初からの円高も追い風だ。マックの主要食材である牛肉(パテ)、鶏肉などはほぼ全量、輸入に頼っているからだ。例えば牛肉の主要仕入れ先であるオーストラリアの豪ドルは昨年初めの97円半ばから今年初めに88円、さらに直近では78円強と大幅な円高方向に振れている。同社の昨年の材料費533億円のうち7割が輸入と仮定すると、単純計算では10%の円高で年間40億円近い材料安になる。下半期に現在の為替水準が続けば利益上振れ要因になるだろう。

45周年の今年はマック復活の年

さらに半期ベースで見ると、フランチャイズ店への支援負担が下期は大きく減る。これは大幅減収となった店舗のロイヤリティー支払いなどを減免する救済措置で、昨年は135億円の利益マイナス要因になっていた。売り上げの回復によりこの大部分の支援措置を6月末に打ち切ったことで、上期から下期にかけて上記マイナス要因の約60億円程度の増益要因になってもおかしくない。

以上は非常に大雑把な計算だが、営業利益が上期4700万円に対し、通期33億円という会社予想はやはり保守的に見える。ただ、上振れ分を広告宣伝費や値下げ原資などに回して来期のさらなる回復を盤石にするという経営判断も十分考えられる。

日本マクドナルドは日本のファストフードの草分け的存在で、1971年7月に銀座三越に第1号店をオープンし、今年が45周年になる。最悪期には7ヶ月連続で既存店売上高が前年比2割以上落ち込み、全国約2000のフランチャイズ店の一斉離反が噂されるなど存続が危ぶまれたこともあった。

しかし、この7月までで既存店売上高が8ヶ月連続、客数は7ヶ月連続で前年比プラスとなり、下期にさらなる業績改善が期待できる。株価も15年ぶりの高値をつけた今年は「マック大復活の年」になりそうだ。(シニアアナリスト 上杉光)

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