イタリア製オープン2シーター「アバルト124スパイダー」。10日8日からFCAジャパンより発売される予定だ。
「アバルト124スパイダー」は、マツダ ロードスターのアーキテクチャをベースに、フィアットと共同開発したスポーツカーである。いわば、マツダ ロードスターとは兄弟のような関係であるが、キャラクターは大きく異なる。オープン2シーター好きなら気になる2台であるが、読者のみなさんはどちらを選ぶだろうか。
レース由来のアバルトを冠に
そもそも「アバルト」とはどんなブランドなのか。なじみの薄い人もいることだろう。
サソリのエンブレムに象徴される「アバルト」。このエンブレムは創業者のカルロ・アバルトが、11月15日生まれのさそり座だったことに由来する。
1908年、オーストリアに生まれたカール・アバルトは、若い時からバイクレースで活躍した。しかし、第二次世界大戦が彼の運命を大きく変える。戦禍を逃れるためアバルトはイタリアの市民権を取得し、名前もカルロに変え、ユーゴスラビアに疎開するのである。この決断でアバルトはレーサーとしてのキャリアを断念することになる。
第2の転機が訪れたのは戦後間もない1949年。北イタリアで生活する彼が勤めていた会社の経営破綻だった。失業した彼は自身で「アバルト& C.」を創業する。経済成長期を迎えた1950年代には、同社の提供するスポーツカーやレーシングカー、チューニングキットが評判を呼んで順調に業績を伸ばし、アバルトのレースへの情熱が事業として結実する。
その後も事業規模は拡大したものの、多額の資金を必要とするモータースポーツの世界で、次第に資金繰りに苦慮するようになる。1971年にはフィアット傘下に入り、アバルトはレーシング部門を担うこととなる。
1960年代の名車への「オマージュ」
今回発表されたアバルト124スパイダーは、1960年代に名車と呼ばれた同名のスポーツカーに対する「オマージュ」として蘇ったものだ。たとえば、フロントエンドのオリジナルラインや六角形のフロントグリル、縦置きを示すボンネットの膨らみに50年ほど前の名車の面影を感じることができる。
生産はマツダの工場で行われるが、スタイリングデザインはもちろん、パワートレイン、室内装備、サスペンション、ステアリングフィールもFCAが独自で開発したものだ。
特筆されるのはエンジンである。FCAオリジナルのエンジンは最高出力170馬力、最大トルクは25.5kgmを発揮する高トルク型のターボを搭載。一般道は最新のアクティブセーフティで制御されるが、サーキットではドライバーが電子制御をコントロールすることでリニアなエンジンレスポンスを味わうことができる。
そのエンジンは、N/Aにこだわりを持つマツダ ロードスターとは異なる世界観であり、創業者であるカルロ・アバルトのレースへの情熱が込められているかのようでもある。
価格は6MTが388.8万円、6ATが399.6万円。輸入車としてはお手頃な設定といえるだろう。