アリババグループのアリペイ(支付宝)は10月12日から、2万元超えの取引に対し0.1%のサービス料を徴収することを発表し、無料サービスに一定の枠をはめることになった。以下その影響について考察してみよう。

決済市場で大きく伸びる

アリペイはアリババグループの提供する“第三方支付平台”(現金でもカードでもない第三の決済プラットフォーム)である。このカテゴリーでは中国のトップを走り、2014年第二四半期には、世界最大の扱い高となったとしている。

実際、2015年以降、決済ツール同士の競争には目を見張るものがある。大型スーパーでアリペイが使えるようになると、後を追うように、WE CHAT PAY(微信支付)も使えるようになる。微信支付で支払うと値引きとなるセールもただちに登場した。「ZARA」の店舗ではサムスンペイで支払うと割引きというセールも行われていた。

またアップルペイは銀聯カードと提携して展開しているが苦戦中のようである。決済の最前線では、銀聯カードそのものが、急速に過去のツールになりつつある印象だ。

勢力争いの中心は、支付宝と微信支付、アリババVSテンセントの2強対決である。このうちテンセントの微信支付は、今年3月月に0.1%の手数料を導入している。無料サービス限度額は1000元である。それから10カ月遅れでアリババの支付宝が後追いをする形になった。

影響は本当に限定的か?

支付宝の責任者は、全体の80%は2万元枠の範囲内に収まっていて、影響は限定的と述べている。さらに消費、投資、保険購入、公共料金支払い、交通違反の罰金支払いなどには影響がないという。消費というのはネット通販での購買を指す。投資については次のように説明されている。支付宝または銀行から、“余額宝”(アリババグループのオンラインMMF)に資金移動する場合は無料を継続する。したがって余額宝は引き続き最も優れた投資商品である。

その他にも影響を最低限にするため10月12日前に何をしておくべきかという記事が出ている。支不宝の余分なお金は余額宝に移したほうがいい。余額宝からの本人銀行口座への資金移動は無料だからだ。また上海市民は1人当たり、年間平均で10万元をアリペイに消費した、というデータもある。金持ちが平均を押し上げているのは間違いないが、彼らは別の無料サービスに資金移動をするかも知れない。本当に限定的ですむかどうか疑問は残る。

サービス向上が目的

サービス料徴収後は、ネットサービスプラットフォームのレベルアップに努め、個々人に最適なサービスを提供するという。また第三方支付同士における争いはますます激烈となっている。各社が顧客資金の取り込みを図るなか、自社システムの拡大に投資をしなければならない。新規の手数料収入はこれらに振り向けられる、としている。

今後の見どころは、支付宝と微信支付の直接対決の行方と、第三勢力として地歩を固める会社はどこかの2点である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)