ロシア経済がここ数カ月間メディアで報じられているほど楽観視できないことが、総務省統計局の発表から明らかになった。

2015年9月には917億ドル(約9兆2507億円)だった景気調整基金が322億ドル(約3兆2483億円)に減っており、年内には150億ドル(約1兆5132億円)をきると予想されている。

また中央銀行の外貨準備も、2013年10月の5240億ドル(約52兆8611億円)から3950億ドル(約39兆8476億円)に縮小していることから、底をつくのは時間の問題だという見方が強まっている。

最終的には厚生資金に手をつけざるを得ない?

2011年からすでに経済が低迷していたロシア。ウクライナをめぐる和平合意が引き金となり、2014年EUが経済制裁を執行したのを機に、翌年から過去20年間で4度目の経済危機に突入した。

変動相場制に移行するなど対応策を連発していたが、景気後退の根本的な原因であった生産能力や労働力の向上、必要な設備投資など、経済成長の維持に不可欠な問題は解決されず、そこへ原油価格の暴落が追い打ちをかける結果となった。

長引く原油価格の低迷は、1バレル50ドル(約5044円)という設定で組まれたロシアの2016年国家予算に、大幅な狂いを生じさせた。

ロシアの原油収入は2年前には政府の収入の50%を占めていたのに対し、現在は37%程度にまで落ちこんでいる。

国際開発機構、インターナショナル・ファイナンス・コーポレーション(IFC)のチーフエコノミスト、オンドレイ・シュナイダー氏は、「このまま原油価格が安定しなければ、ロシアは2017年中期には完全に財布が空っぽになるだろう」とコメント。

9月16日、中央銀行が景気刺激として金利を10.50%から10%に引き下げたほか、9月18日にプーチン政権が圧勝した下院選後、来年の予算の見直しなどが予定されているが、現状に歯止めをかける具体的な対応策は提案されておらず、「最終的には厚生資金で国を賄う事態に発展しかねないのではないか」との懸念も高まっている。

7月にはIMF(国際通貨基金)がロシア経済の今年のGDP(国内総生産)成長率をマイナス1.5%から1.2%に引きあげ、来年の見通しを1.0%に修正したため、経済制裁の圧力に屈することなく資源国の弱点を克服したかのように見えたロシアだが、試練はまだまだ続きそうだ。

経済制裁が来年1月まで延長されると決定したことも、経済の悪化に拍車をかけるだろう。(ZUU online 編集部)