「日本列島改造論」に大きな期待

田中氏といえば「日本列島改造論」が有名だ。特徴として挙げられるのが東京などの大都市への過密を地方に分散させるビジョンを提示していることだ。都市と地方の距離を縮めるには航空網の整備、新幹線、高速自動車道の建設、情報ネットワークの形成により時間距離を縮めそれも解消する。この「夢のビジョン」に、時代もあって国民が大きな期待を寄せた。

こうしたビジョンを提示できることは、政治家、リーダーとして非常に重要な資質だ。例えば米国ケネディ大統領が「月に人を送る」と宣言した時、米国民が大きな夢を共有した。人類にとっても大きな価値であり、人が夢やロマンを抱くことのできるビジョンを提示することは、政治家にとってはきわめて大きな価値がある。

田中氏にあって現代のリーダーにないもの

自民党の二階俊博予算委員長は雑誌の対談で田中氏について、「今日まで先生を超える人に会ったことはありません」と言っている。彼は当選10回の重鎮。運輸相、経産相、自民党総務会長、国対委員長などを歴任しているが、過去に新進党や保守党などにも籍を置いてきている。

長年のキャリアで根気や胆力を身に付け、与野党問わず幅広い人脈を持つ二階氏が言うには、田中氏は「国民にも政治家にも上から下まで、否、下から上まで気を配り、人心を引きつけていく」人物だという。そのうえで、「何に対しても、常に真剣勝負でした」と述べている。

一方、書官として田中氏に仕えた小長啓一・元通産次官によれば、「1年生議員から政調会長になる10年間で議員立法を25本以上成立させ、すべてご自分が主答弁者でした」という。法案作成から答弁まですべて自身がやるということは、役人と同じレベルの知識が必要なのだ。

法案を作るときに苦労する部分、ポイントまで把握している。そこがほかの政治家とは全然違うというわけだ。法案を作る過程で、各省庁に所属する若い官僚と仲良くなった。田中氏が首相になった頃には彼らが各省の局長クラスとなっており、電話1本で懇意に話せたという。その際も、役人に指示するといった感じではなく、昔の同志として話をしている感じで、役人をも惹きつける魅力となっていたと言われている。

田中氏はいつも、仕事は人に任せて、自分は責任を取ると言っていたという。今回あまり取り上げなかったが、たしかに彼に対するネガティブな評価や意見も少なくない。「是」ばかりでなく「非」とともに受け止められている行動もある。

しかし、豪快な親分肌で、未来を示すのことのできるビジョナリーであるからこそ、先行き不透明な現代において、あらためて評価されているのだろう。(ZUU online編集部)

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