「円高進行・原油価格安定・爆買い」が追い風に
100円ショップでは、多くのプラスティック製品を取り扱っており、原材料価格の低下は業績への追い風だ。2015年3月期の業績を振り返ると、円安・材料高によるコスト上昇圧力がかかり、増益を確保したものの、純利益の伸び率は前年同期比で8.5%増にとどまっていた。
また、大部分の商品を海外製に頼る100円ショップにとって、為替レートは業績を大きく左右させる要因の1つだが、他にも商品市況で原油価格が1バレル=40ドル台の水準に落ち着いているのもプラスに作用している。
こうした状況を受けて、キャンドゥは粗利益の改善策として、プラスティック製品関連会社と価格交渉に乗り出すほか、円高のトレンドにより輸入品の仕入れ価格の見直しにも踏み切る。アベノミクスの雲行きが怪しくなり、消費者の節約志向で100円ショップの存在感が増しているのに加え、訪日外国人による売上アップにも期待がかかる。特にアジアを中心とした観光客には、日本の100円ショップは人気で、観光ルートのショッピングにも組み込まれ、「爆買い」の光景が見られる。
独自システム「SPI」で売上UP
こうした消費者の動向を見逃すまいと、企業側の業務改善も続く。特に100円ショップでは、取扱商品が万を超えるなか、どの商品が売れ行きで、在庫状況を適切に把握することが重要になる。
そこで導入されたのが、販売時点情報管理システム・POSだ。セリアでは、独自のSPI(Seria Purchase Index)をベースにして、顧客1000人あたりで商品がいくつ売れたかをはじき出し、売れ筋の商品を適格に発注して陳列するとともに、売れ行きが伸びない商品を早期に把握して、他の商品への入れ替えなど対策に乗り出す。
他の小売業過では、売れ行きの悪い商品は、値を下げたり、抱き合わせ販売をしたりすることで、さばく可能性も残されているが、100円に値段が固定されている100円ショップでは、こうした手段がとれないため、顧客からの需要状況を正確に把握することが、売上アップに直結するのだ。
業界最大手のダイソー(非上場)の矢野博丈社長も、以前はどのような商品でも売れていた時代があったが、最近は売れる商品と売れない商品が鮮明に区別されるようになり、熟練バイヤーでもその見極めは困難で、POSシステムによる分析の重要性を指摘する。
たゆまぬ企業努力に加え、円高、資源価格の安定など外部要素が業界には後押しとなって業績を押し上げる。さらに、デフレマインドの広がりによって、消費者の100円ショップ頼みの傾向は強まっていくとみられ、当面は堅調にビジネスが推移していきそうだ。(ZUU online 編集部)