ロンドン証券取引所のザビエル・ロレットCEOは、「英EU離脱が少なくとも10万人の失職を引き起こす」可能性を明らかにした。

欧州の金融拠点であるロンドンでユーロ建ての決済業務が処理できなくなった場合、英国中の金融機関のバックオフィスやミドルオフィスは勿論、リスク管理・コンプライアンス部門にまでリストラの影響がおよぶという。

その一方で「実際に移動が行われる可能性は極めて低い」との見解も示している。

独、仏では役不足だが移動の可能性はゼロではない

国際決済銀行(BIS)のデータによると、ロンドンは巨大金利スワップ決済機関、ロンドン・クリアリング・ハウス(LCH)を筆頭に、ユーロ建ての店頭デリバティブ(金融派生商品)取引の75%を処理する世界有数の金融業務大国である。

しかしEU離脱に向けて下準備が進められる中、「金利スワップの中心地」としての称号がほかのユーロ圏へと移行する可能性は否めない。

EU加盟国でなくなる英国、つまり「よそ者」に、巨額の取引を任せておけないというのが、EU側の主張であると同時に、ドイツやフランスなどはBrexit決定直後から、ロンドンに代わる金融都市をフランクフルトやパリに築こうと、積極的に働きかけている。

現在英国に次ぐ第2の金利スワップ国はフランスだが、取引量はわずか6分の1だ。ドイツにいたっては10分の1にも満たない。経験・規模ともに、英国の足元にもおよばない。

9月23日、米TV番組に出演したロレットCEOは、「ロンドンと対等に業務をこなせるだけの環境が整った金融都市は、ニューヨークぐらいしかない」とコメント。

ドルとユーロをごちゃ混ぜにした巨額金利スワップなど前代未聞であるため、こうした動きが最終的には無駄骨に終わると比較的楽観視している反面、「移動の可能性を全面的に否定しているわけではない」との懸念も示している。

EUの権限をかさに強引に移動が実施された場合、ユーロ圏の金利スワップに大混乱を引き起こすのは間違いないだろう。

英国側にとっては10万人の失職、自国側にとっては清算業務システムの混乱という危険なリスクと戦うだけの覚悟が、EUにはできているのだろうか。(ZUU online 編集部)

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