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(画像=Webサイトより)

奈良県で来年、2017年開催の「国民文化祭」のロゴマークのデザイン料540万円が高過ぎるとして、県内の市民団体「見張り番・生駒」が県に対して住民訴訟を起こしている。過去の同じような事例から、「30万円程度が適切」だというのがその主張だ。

ロゴマークは、実行委が「くまモン」などを手がけた著名デザイナー、水野学氏に随意契約で発注された。制作費は540万円。果たして「高過ぎる」のだろうか?

「くまモン」を制作した有名デザイナーに発注

市民団体は「県は『くまモン』の発注額を引き合いに適切だと言っているが、過去のロゴマーク制作でも荒井知事は自分の知り合いに仕事を発注しているという疑惑があった。そもそもロゴは本来なら県民から公募して、県の中で盛り上がるためのもの。東京の知名度のあるデザイナーにわざわざ発注する必要はない」と話している。

540万円というデザイン料が「不当に高すぎる」という主張の根拠として、他のイベントの例が挙げられている。

例えば2013年に山梨県で行われた国民文化祭では公募で最優秀作品賞の賞金が5万円だった。また2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムも最終的には公募で選出されたが、この賞金は100万円だった。これらと比較して本件のデザイン料として「540万円は高い」といえるのだろうか?

デザイン料はどうやって決まるのか?

広告やポスターのデザインや、商品・企業などのロゴのデザイン料はどのように決められるのだろうか?

誤解を恐れず分かりやすく言えば、デザイン料はデザイナーやデザイン会社の実績やネームバリューによる「言い値」だ。その「言い値」に発注者が納得すれば、そのデザイン料は「適正」だといえるし、高すぎると思えば発注しなければいいだけの話だ。

とはいえ、まだ見えないデザインの料金を事前に判断することは難しい。そのため発注者にとっては、デザイナーやデザイン会社の実績やネームバリューのみが判断材料になる。
デザイナーは自分のデザイン料をどのように決めているのだろうか。実はデザイナー自身も実績やネームバリューをもとにデザイン料を設定する。デザイナーがデザイン賞や広告賞を獲るの一喜一憂するのは、よりいい仕事を手掛けて実績やネームバリューを上げる最もいい方法だからだ。実際、一般的にはデザイン賞や広告賞によってデザイン料は上がる。

デザインの適正価格とは?

本件は「くまモン」の成功という実績が最大の判断材料であり、高いデザイン料を提示されればそれだけのクオリティと成功を期待するのは当然だろう。

だが540万円が適正だったか否かの判断は非常に難しい。デザイン料が適正か否かは発注者の判断次第だからだ。発注者にデザインやデザイナーについて、さらにはデザイン業界の知識や経験がなければよりベターな判断は難しいだろう。

市民団体が主張しているように、デザインひとつに540万円もの価格がつけられることに驚く人は多いだろう。デザイン料には一般的な製品の生産のように厳密な意味での製造原価はないので、紙と鉛筆があればできるようなものにそんなに高いプライスがつくのか、という考えがまだまだ多い。

だが優れたデザインを生むには優れたテクニックや技術・技量が必要であり、デザイン料はその対価なのだ。製造業でいえば「技術料」と考えてもいいだろう。

たとえばユニクロの今のロゴデザインは、佐藤可士和氏によるものだが、以前使用されていたデザインをもとに微妙に修正されたものだ。素人目にはわずかな違いだが、その修正によってイメージを刷新し、認知効果を高めることに成功している。単純なデザインでも、より効果を高めるためにはプロフェッショナルの技術が必要なのだ。

一見簡単にできそうでできないのが「優れたデザイン」であり、デザインのようなソフトを生むためには「適切」な料金があることは、もっと理解されていいだろう。

なぜ随意契約だったのか?

もう一つ問題とされているのが、随意契約では競争性・透明性が担保されていないということだ。水野学氏と随意契約を結んだ理由について奈良県は、くまモンが1244億円の経済波及効果や90億円の広告効果を熊本県にもたらしたことなどを理由に挙げ、随意契約の正当性を主張している。

随意契約とは本来、難易度が高く、特殊性・専門性が求められて他の会社に発注できない性質の業務や、実績があり業務の内容が担保されている、または業務の連続性が重視される場合に行われるものだ。果たして、本件は随意契約、言い換えればデザイナーの指名方式が適切な方法だったのだろうか。

「くまモン」と同じ方向性のキャラクターのデザインを発注したいのであれば、実績のある「くまモン」がベンチマークになるので随意契約が妥当であったという主張も通るかもしれない。

だが、「くまモン」が成功したからといって、同じデザイナーの手による「国民文化祭」というイベントのデザインも優れているとは限らない。発注する側がそのことをよく理解していたのかは疑問が残る。(ZUU online 編集部)

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