税理士事務所を開業している筆者の顧客は個人が3割、法人が7割だ。その中で、よく相談を受ける内容、よくあると感じる「税に関する誤解」をお伝えしよう。

誤解1 個人編「相続時精算課税制度が相続税対策になる?」

「相続対策をするには生前贈与が最適。しかも相続時精算課税制度を利用すれば税金がかからないとききました。そこで、相続時精算課税制度を利用したい」

こういった相談がよくあるように思う。たしかに相続時精算課税制度は、2500万円まで贈与しても無税であり贈与税としてはとても便利な制度である。

しかし、これは各人の相続財産によっては全く相続対策にはならないことを伝えたい。

相続時精算課税制度によって生前贈与された財産は、相続時全額加算されるのである。他に、相続財産がない場合にはとても有効な制度であるが、他に基礎控除以上の相続財産がある場合には、相続時結局引き戻して加算されるためまったく相続対策にならないのである。

よって、この制度を利用する場合は慎重にシュミレーションする必要がある。生前贈与で対策をとりたい場合は、いろいろな手法を検討すべきである。

補足ではあるが、通常の贈与110万円以下(暦年課税制度)は、相続時過去3年分については加算されるが、それ以前については相続時には加算されないので早くから対策をとっている方には有効である。

しかし、直系尊属の住宅取得資金の非課税制度などは相続時にも加算されないのでいくつか手法はあるので専門家に相談したほうが得策である。

誤解2 法人編 「経営が悪化したときは役員報酬を減額・ゼロにできる?」

「資金繰りが困っているとき役員報酬ゼロにしたい。経営が悪化しているときには減額できると聞いた」

法人の役員報酬は、定期同額給与という制度となっている。よって期中にむやみに役員報酬の金額を変えることができない。

逆も同じで利益が出すぎているから役員報酬を増額したいという相談も受けるが、こちらもダメである。利益操作とみられ、40万円の役員報酬で50万円役員報酬を支払った場合、差額10万円の部分のみならず50万円全額経費計上できないという最悪の事態になりかねない。

「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのだが、「資金繰りが厳しいのは理由になるのではないか?」と経営者から相談を受ける。

しかし、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれない。

ではどういった場合のことを言うのだろうか。具体的には、財務諸表の数値が相当程度悪化した、倒産の危機に瀕している、経営悪化により、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額しなければならなくなった−−などだ。

また役員が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できなくなった場合に、役員給与の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められる。

単に資金繰りが厳しい場合は、期中に関しては役員報酬/未払金という処理にて経費計上しつつ未払処理も可能となる。くれぐれも「役員報酬0/現金0」としてはならない。

補足として、役員報酬の金額を変更できる場合として、通常改定の定時株主総会による増額・減額改定、臨時改定事由による改定(外部要因)役員の職制上の地位の変更などにより期中に行う増額・減額改定がある。

さらに詳しくいうと。期首から原則3カ月以内(3月決算法人なら6月末まで)に行う改定であること、事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であること、事業年度内において、改定後の毎月の支給額が同額であることである。

決算が終わったと安心せず、早速翌期の役員報酬の金額について顧問税理士と相談しよう。

誤解3 会社員編 給与所得が2カ所あるが20万円以下だから申告は不要?

会社員からの相談も結構受けている。相続や贈与のお客様は会社員も多いのだ。その中で質問をよく受けるのアルバイト代の副業だ。「20万円以下であれば申告不要だからしない」と言われることがあるが、これは雑所得の場合である。雑所得であれば、そのとおり20万円以下であれば申告しなくてよい。

しかし、アルバイトの形態が雇用であれば給与所得なる。給与所得の場合は、2カ所以上あったら確定申告をしなくてはならないので注意する必要がある。

「副業はバレるか?」という質問を受けるが、正直それは税理士では判断できかねるところである。ただ気を付けるという点では確定申告をする際、住民税の徴収方法を「自分で納付」にチェックすることでリスクは軽減できるはずではある。

しかし絶対ではない。

税金は制度を知ってるととびつくと思わぬ落とし穴があったりもする。誤解によって高額納付や脱税となってしまうのは残念である。信頼できる税理士に相談して節税をするといいだろう。

眞喜屋朱里 (税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表)

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