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(写真=PIXTA)

突然だが読者の皆さんへ質問だ。次の(1)~(3)から一つ、「人生の3大費用」を指している組み合わせを一つ選んで欲しい。

(1) 生涯の生活費、子の教育費、医療費
(2) 子の教育費、住宅購入費、老後の生活費
(3) 住宅購入費、医療費、親の介護費

これは金融広報中央委員会が、いまの日本の個人に対する「お金の知識・判断力」を大規模に調査した「金融リテラシー調査」での質問だ。10代からの金融教育を求める声が高まる中、実施状態やその有無によっての回答率の差など、実に興味深い内容でまとめられている。

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冒頭のような質問51項目から構成され、全国18歳~79歳の2万5000人を対象にしたアンケート調査をまとめたものが、2016年6月に発表されたのだが、その質問の一部に、先ほどの「人生の3大費用」がでてくる。実際の正解率は47.6%で、わずか約2人に1人が正解という結果だった。

正解は(2)。子の教育費、住宅購入費、老後の生活費が3大費用である。だれが決めたのだなんて屁理屈を言わないで最後までお読みいただきたい。

別の質問項目で得た回答を当てはめてみると、「必要額を認識している人」の割合は、49.4%~56.8%、「資金計画を策定している人」の割合は35.2%~48.8%、「資金を確保している人」の割合は、15.5%~32.8%となっている。

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我が国 負のサイクル要因「教育費」

2009年度文部科学白書によれば、大学卒業までにかかる平均額は、すべて国公立で1000万円、全て私立となると2300万円にもなる。仮に直近のデータを採取するのであれば、その数字は2009年度より増えているだろう。

よく世間では「子供一人に1000万円」と言われるが、筆者自身シングルで子育てをしていていつも思うのは、「教育費に1000万円」であって、その他生活費を含めると、2倍~3倍にもなるのだ。
FP業界では、子供が人生の経済的重荷のような話になりがちだが、一方では次世代の貴重な担い手であって、その育成負担を個別の親にだけ強いるのは、もはや限界に達している。

実際に同白書中の、教育費負担に関する国民の意識調査結果では、「子育てのつらさの内容」の上位2つが、「子供の将来の教育にお金がかかること」で45.8%、「子供が小さい時の子育てにお金がかかること」で25.5%--となっており、合算すると経済面での不安が実に71.3%も占めている。

いかに子供の教育にお金がかかるか、またその負担が、少子化の負のサイクルの要因になっているかがお分かりいただけるだろう。

一生にかかる住宅費は、5700万円~1億円?

「いつかはマイホーム」--。画一的なキャッチコピーが並ぶ高度経済成長期とは変わって、生涯の住まいは賃貸で、とする人も、最近では珍しくない。とはいえ、住まいにかかる経済的負担は、家計の中で最も大きいものと言えよう。

国土交通省の2015年度住宅経済関連データを調べてみると、持ち家世帯が住宅ローンなどの返済に割り当てる収入比率は、平均8.9%。賃貸世帯が13.9%。

一見、持ち家の方が負担は少なそうに思えるが、この費用以外に、毎年6月に支払う固定資産税・都市計画税、マンションであれば管理費・修繕積立金などがある。一戸建ての場合は、老朽化に備えて、自ら修繕費用をねん出する必要もでてくる。

持家か賃貸か、という議論はメリット・デメリットの違いで、個々の幸福感によって変わる事もあるので、その議論はまた別の機会にするとして、一生のうちに住宅にかかる費用を、大まかな計算ででも見てみよう。

25歳~85歳までの60年間で、次の費用が生涯賃金の中から住宅費として、必要になる。毎月家賃の8万円だと5760万円、10万円で7200万円、12万円で8640万円、15万円の場合は1億800万円となる。やはり大きな支出だ。

仕事をせず長生きすればするほど、必要なお金は甚大

老後の生活費となると、はやり「(老齢)年金」の話になる。先日政府が閣議決定した法案では、国民年金の受給資格を、最低25年から10年まで短縮するという。国民年金は、20歳~60歳まで40年間満額を支払ったとして、受け取れる年金額は約78万円。受給額はひと月あたり6万5000円だ。10年への短縮が認められたとて、単純に40年を10年に換算したら、ひと月あたりの受給額は1万6250円、子供の小遣いぐらいだろうか。

厚生年金は、平均報酬月額36万円の場合、専業主婦世帯の年金受給額は約23万円。国民年金の夫婦で13万円(6万5000円×2人)よりは随分多いが、それでも満足に暮らせるには満たないだろう。緊急予備資金など貯えも必要だ。

ではその差額を自助努力で現役世代にこしらえて置くしか方法がないとすると、現在の銀行定期預金(長期金利)0.3%で計算すると、複利運用40年間の積立額は、3,000万円貯めるのに、毎月約5万9000円、5,000万円貯めるのに、毎月約9万8000円。7,000万円貯めるのに、毎月約13万7000円、1億円貯めるのに、毎月約19万6000円とこんな具合だ。預金だけ、しかも0.3%という年利数値の計算なので、少々現実味が欠けるかもしれないが、数字はウソをつかない。

単に「3大費用」というと耳慣れしてしまうものだが、掘り下げて数値化すると、落胆の声が聞こえてきそうだ。このような話は10代の頃に筆者は知りたかった。

金融教育が時代に合わせた形で、一刻も早く広く実行されることを願う。

佐々木 愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種
国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。FP Cafe登録FP

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