雨乞いは必ず成功する
「あの人の言うことはよく当たる」「あの人の相場予想は素晴らしい」そんな話をしばしば耳にする。それも投資本を買ってしまう動機の一つかもしれない。
相場を予想することは「雨乞い」と同じだ。
昔、偉いお坊さんが雨乞いを行ったところ、たちどころに雨が降り出したという伝説が日本中に残っている。
では、雨乞いを行ったにもかかわらず、雨は一滴も降らなかったという伝説を聞いたことがあるだろうか? 過去に行われたすべての雨乞いが100%の確率で成功したとは常識的に考えられない。失敗した雨乞いは山ほどあるはずだが、それらは人の記憶に残らないのだ。
そもそもどんな干ばつであろうとも、10年も20年も一滴の雨も降らないなど考えられない話だ。つまり、雨が降るまでの時間さえ拘らなければ雨乞いは必ず成功する。
相場もまったく同じである。
「株は騰がる」と、言い続けていればいつかは騰がるのだ。たとえその間にリーマンショックが起きようとも、結果として雨乞いは成功したことになる。逆もまた然りだ。常に「株は暴落する」と言い続ければ、いつか株は下がる。その時には「リーマンショックを予測した」などというキャッチフレーズでもつければ、本の売り上げに多いに貢献するだろう。
投資本とは「雨乞いの記録」である
つまるところ、投資本とは雨乞いの記録なのだ。干ばつで多くの人が途方に暮れていたところ、雨乞いを行ったら見事に雨が降ってきた。その時にはこんな儀式を行ったという記録なのだ。雨は降るべくして降ったのであり、決してその「怪しげな儀式」が雨を降らせたわけではない。
投資本にもこれがピタリとあてはまる。投資本を買うくらいなら、映画でも観に行った方がよほど楽しいのではないだろうか。(或る銀行員)