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(写真=PIXTA)

賛否両論ある日銀のマイナス金利政策ですが、この政策で恩恵を得るものの一つに不動産投資があります。

投資規模が大きい不動産投資では、いかに低金利で融資を獲得できるかが成功の鍵を握ります。したがって、投資用の融資を含めて、空前の低金利にある現在は、不動産投資にとって、またとない好環境にあるのは間違いないでしょう。

しかも地方銀行などを中心に、不動産投資向け融資への積極姿勢がうかがえます。「低金利で、しかも借りやすい」という、不動産投資家には絶好のチャンスが到来したと言えるかもしれません。

ですが、ちょっと待ってください。こうしたチャンスにも、注意すべき点はあります。安易な不動産投資で失敗しないためにも、今回はマイナス金利下の不動産投資における2つの注意点について取り上げます。

1. ライバルの増加

低金利で融資が受けられれば、それだけ不動産投資の実質利回りも改善します。実質利回りにゆとりがあれば、多少の空室にも耐えられ、計画的な修繕で物件の魅力を高めていくこともできます。そういう意味では、不動産経営のハードルが下がることになり、不動産投資が初めてという方も参加しやすくなります。

さらに、金融機関が不動産投資向け融資に積極的になることが、この流れを加速させます。その結果、ライバルとなる投資家が増えると予想され、これによるさまざまな影響が心配されます。

● 物件価格の上昇

不動産投資家が増えれば「売り手市場」となり、物件価格はじわじわと上昇していくことが予想されます。しかも、にわか投資家が「せっかく融資が付くのだから」と、きちんと収益性を見極めないで安易に購入してしまうケースも考えられます。本来はまだまだ値下げ交渉できる物件でも、にわか投資家に「買い負け」してしまう恐れもあるわけです。

このように収益性を反映しないまま物件価格が上昇してしまうと、健全な賃貸経営ができなくなります(家賃収入でキャッシュフローをキープするのが難しくなります)。

こうなった場合は、たとえ金融機関の融資が見込まれていたとしても、撤退する勇気を持つべきです。金融機関の融資判断は、決して、賃貸経営にお墨付きを与えたものではありません。「買えるかどうか」ではなく、あくまでも「収益が確保できるかどうか」を冷静に判断しなければなりません。

● 家賃競争

ライバルが増えれば、家賃競争も激しくなるでしょう。空室が発生した時は、安易に家賃を下げるのではなく、敷金・礼金を無料にする「ゼロゼロキャンペーン」や、一定期間家賃を無料にする「フリーレント」などを実施して、できるだけ家賃を保つことが重要なのですが、にわか投資家の場合、簡単に家賃引き下げを行う懸念もあります。するとたちまち、家賃競争で一帯の家賃相場が引き下げられる恐れがあるのです。

家賃相場が下がっては、収支計画が根底から崩れてしまい、「収益物件」は「(所得の)収奪物件」に変わってしまうかもしれません。マイナス金利環境下での不動産投資では、現在の周辺相場より1割程度引き下げた家賃設定でも、なお収益を確保できるかどうかをシビアに計算して、投資判断を行わなければなりません。