「2017年下半期には米国が景気後退期に突入する」との警鐘を、バンク・オブ・アメリカのエクイティ・アンド・クオンツ(量的)戦略部門の責任者、サヴィータ・スブラマニアン氏が鳴らした。

FRB(連邦準備銀行)による景気刺激策の成果で7年連続で成熟局面にある米経済だが、大幅な政策変更や下方修正が実施されない限り、鈍化が表面化するのは時間の問題だという。

不安定要素と強気要素が複雑に交差する市場

10月9日、米CNBCのTV番組に出演したスブラマニアン氏は、現在の市場がいかに脆いものであるかを力説。1928年以降の景気指標を分析した結果、このままでは成長がマイナスに傾くことはほぼ確実だという。

世界的な経済危機のサイクルには7年説(1987年ブラックマンデー、1994年アジア通貨ショック、2001年トルコ・アルゼンチン危機、2008年リーマンショック)が定説となっていた。しかし前回の危機から8年目に突入したこと、総体的な雇用口は勿論、中間層の雇用が拡大されたこと、自動車産業が好調な伸びを見せていることなどが楽観視の材料となっている。

こうした労働市場の表面的な動きとは裏腹に、脆弱性が目立ち始めているのも事実だ。株式市場もS&P、ダウなどで最高値を更新した8月15日を境に、現在は1.8%落ちこんでいる。スブラマニアン氏はこの数字が年末にかけてさらに縮小し、最終的には7ポイント減、株価指数は2000ポイント前後と予測。

今年1月に突然1800ポイント台に落ちこんだ例はあくまで氷山の一角で、「景気成長を本格的に鈍らせる不安定要素で満ちあふれている」と悲観的だ。こうした懸念を示す声は多数の専門家からあがっており、「追加利上げの根拠が強まっている」と楽観的な姿勢を崩さない政府側と真っ向から対立する。

経済指標や景気指数が弱まり、下ぶれのリスクが持ちがる中、昨年は企業の倒産率がリーマンショック以降最高レベルの達したほか、個人負債額も急増するなど、弱気にならざるを得ないマイナス材料が勢ぞろいという印象はぬぐえない。欧州、アジア国からの影響も気になる。

強気な政府と弱気な専門家、どちらが正しかったのかが証明されるカウントダウンにはいったようだ。(ZUU online 編集部)