「資産運用はギャンブル」という言い方をされることがあります。確かに、大穴狙いで適当な株や通貨を買うのならばそうかもしれません。しかし、好きなように商品を選んだり組み合わせたりしてリスクを調整できるのが投資の魅力。ギャンブルといって切り捨てるのはもったいない面白さがあります。そこで今回は資産運用の種類と失敗しないための運用方法についてご紹介します。

資産運用は種類選びで運用結果が決まる

「損するのは避けたい」と考えるならば、利益はコツコツと積み上げることが正解になります。「せっかく投資するなら、その分の資金をある程度増やしていけるようにしたい」と思うなら、そのリスク商品に投資した資産が、ある程度大きく増えたり減ったりする「ぶれ」を受け入れながら、長い目で増えていくように調整することもできます。

まずは、投資する商品がそれぞれどういうリスクを持っていて、どれくらいのリターンをもたらしてくれるかを理解しておくのが大事。また、資産をいくつか組み合わせて持つことでリスクを減らすこともできます。

リスク別!資産運用の種類を紹介

リスクの大きさごとに、ある程度リターンは決まってきます。リスクの大きさとリターンの大きさを基準に、資産運用の種類をご紹介します。

ローリスク・ローリターン

預けたお金の満額が基本的に100%返ってくるものです。資金を減らさずに済む代わりに、資金を大きく殖やすことはできません。また、固定金利のものはその商品を買うときに利息がいくらもらえるかが見通すことができるというメリットもあります。物価が下がるデフレのときや、円高、金利が高いときに有利なポジションです。

●銀行預金
説明不要かもしれませんが、銀行にお金を預けておくことです。都市銀行やゆうちょ銀行、ネット銀行などさまざまな選択肢があります。銀行ごとに金利が違うので、利便性とあわせ、比較しながら利用しましょう。

メリット:ペイオフ制度により、一行につき1000万円までなら保障され、元本割れしません。お金を使いたいときにすぐ使えるため、生活資金など、使う予定のある資金は預金か財布の中が最適。定期預金に入れておけば使いすぎなども防止できるかもしれません。

デメリット:金利がとても低いため、インフレ=物価が上がったとき、お金の実質的な価値が下がってしまいます。今後も日本では金利上昇の見込みは薄いことから、お金自身がお金を産む効果はほとんど期待できません。

●個人向け国債
日本の国が発行する債券です。年に2回利息がもらえます。満期まで持ちきれば、投資した資金がそのまま戻ってくるので安心です。固定金利の3年と5年、変動金利の10年ものと、満期が3種類から選べます。

メリット:変動ものの場合、景気がよくなって金利が上がるとそれが反映され、利息が増えます。最低金利も0.05%と保証されていて安心。販売窓口ごとにキャンペーンで商品券などをもらえることもあります。

デメリット:買ったときから1年経つまで、基本的に解約できません。それ以降は解約できるものの、直近にもらった2回分の利子を返すペナルティがあります。日本の財政が破たんした場合は投資額が返ってこないかもしれません。

●国内債券
日本の地方自治体や会社などが発行する債券です。半年に一度利息がもらえる場合が多いです。販売時に、投資先が安全かどうか、国内外の「格付け機関」が査定して明示してくれます。国内の金融機関では安全性の高い「投資適格債」が販売されていることがほとんどですが、なるべく高い格付けのものを買うとより安心です。

メリット: 満期まで持てば、投資した資金がそのまま返ってきます。金利は、預金はもちろん、国債よりも高い場合がほとんどです。

デメリット:投資した企業・自治体が倒産すると、最悪の場合は投資資金が戻りません。満期より前に換金することもできますが、その場合値下がりしていることもあり、タイミングによっては損してしまいます。

ミドルリスク・ミドルリターン

投資の結果、お金が大きく増える可能性も、損をする可能性もあるものです。そのなかでも、実際にどんな商品を持つかでリスクとリターンに差が出てきます。

●株式投資
基本的に、証券取引所に上場している企業の株を買うことです。長期で資産を育てたい場合、連続して黒字を出しており、買うときに割高でない企業の株に投資するのがおすすめです。ただし、新興企業の株を買うと、1日で20%値段が動くなど、リスクが大きくなりがちです。

メリット: 買ったときよりも株価が上がれば、その分が利益になります。企業によっては配当金や株主優待を受け取れるメリットも。景気が良くなると企業の業績が良くなるため、株が上がり利益を得やすくなります。

デメリット:買った時より株価が下がってしまった場合、損をしてしまいます。投資先の企業が潰れると、最悪の場合投資した資金がゼロ円になることも。銘柄選びや売買のタイミング選びなど、ある程度手間がかかります。

●投資信託
資産運用会社が投資家から資産を預かり、株や債券などをうまく組み合わせて運用してくれるものです。

メリット:少額から運用できて便利です。手軽にさまざまな国・資産へ分散投資をすることができます。証券会社で買った場合、証券会社が破たんしても「日本投資者保護基金」がそのときの時価評価で1000万円まで保護してくれます。

デメリット:運用が始まると、儲かっていても損してしまっていても、日々「信託報酬」という名前で運用の手数料がとられます。銀行で買った場合は「日本投資者保護基金」の保護が受けられないので要注意。

●外貨預金
他の国の通貨を買って銀行に預けるものです。高金利の受け取りを期待できるほか、買った時より為替が円安になればその分利益が増えます。 メリット: 日本ほど金利の低い国はないので、どの国の通貨を買うにしても高い金利が受け取れます。為替が買った時より円安に進むと、驚くほどの利益が乗ることもあります。銀行で簡単にできるのもメリットのひとつ。

デメリット:特に新興国の場合、為替手数料が高いです。円高が進んだところで売却すると損になってしまいます。預金保険(ペイオフ)の対象外であるため、銀行が潰れた場合は、投資額が保全されません。

●外国債券
世界銀行や外国の政府・私企業の発行する債券です。基本的にドルやユーロなど、外国通貨建てで発行されます。利息はこちらも半年に一度のものが多いです。国内債券と同様、買う時に金利が明示されるため、利益額をある程度計算しやすいです。証券会社で取り扱いが豊富です。

メリット: 日本国内のものより財務が健全で格付けの高い債券がたくさんあり、お金の置き場所としては安全です。外貨預金と同様、円安になれば為替の部分で利益が出ます。

デメリット:満期を待たずに解約しようとすると、債券自体の値段が下がっていて損をすることがあります。為替を日本円に戻すときに円高が進んでいれば、その分損をしてしまいます。

●金(ゴールド)
アクセサリーで持っている方も多いかもしれませんが、投資商品としても古くから人気があります。資産としては、金貨やのべ棒の形で取引されます。銀行で買えることもありますが、地金(じがね)専門店で買うのが良いとの意見が多いです。

メリット:証券や貨幣と違って、そのもの自体に価値があります。そのため、世界経済に不安があるとされる状況でしばしば人気が高まります。インフレに強いです。

デメリット:のべ棒などの現物を持つと、盗難リスクがあります。また、金の先物取引など投機資金の流れに影響され、値段が大きく上下することもあります。

ハイリスク・ハイリターン

100万円投資したら損が200万円になるなど、投資額以上の損失を出してしまう可能性があるものです。反対に、投資した資産をすぐに数倍~数十倍にできる可能性もあります。投資の難易度が高いのも特徴です。

●FX
正式名称は「外国為替証拠金取引」。レバレッジと呼ばれる方法で、最大で預けた資金の25倍の投資ができます。具体的に言うと、10万円預けると250万円を運用できます。

メリット:日本などの低金利通貨を売り、高金利の他国通貨を買えば、スワップポイントと呼ばれる金利差ぶんのお金を日割りでもらえます。外貨預金より為替手数料が安いのも魅力です。

デメリット:レバレッジをかけすぎると、為替が大きく動いたときなどに投資額以上の損が発生し、入金を迫られることがあります。低金利通貨を買い、高金利通貨を売るといった取引をすると、スワップポイントを日々支払う場合があります。

●先物取引
原油やコーン、プラチナといった商品の先物取引や、日経平均株価などの指数先物取引があります。

メリット: 買いからだけではなく、売りから取引を始められるため、投資した商品が値下がりするときに利益を出すチャンスが生まれます。インフレに強い特性もあります。

デメリット:短期で値段が大きく動くことがあるため、買いか売りのポジションをとったあと、予想と反対の方向へ動いた場合、簡単に大損してしまいます。

資産運用の番外編。最近流行っている資産運用とは?

金融商品とはちょっと異なりますが、ほかにもさまざまな資産運用の方法があります。なかでも最近話題を集めている「クラウドファウンディング」についてご紹介します。

クラウドファウンディングって何?

「何かやりたいことがあるけど資金がない」という人が、インターネットを通じて資金を集め、目的の製品を作ったり、サービスを行ったりする仕組みのことです。「Crowd(群衆)」という単語と「Funding(資金調達)」という単語を組み合わせた新しい言葉です。日本では「READYFOR」や「CAMPFIRE」といったサイトが有名です。

一定の期間内に目標金額が集まれば、商品開発やサービスがスタートします。それらがうまくいった暁には、出資したひとに金額に応じてリターンがあることも。おもしろいアイデアや、これまでになかった便利な製品などが開発される場に立ち会える楽しみがある一方で、プロジェクトが途中で頓挫したり、資金調達した人が蒸発するような詐欺も起きているようです。

初心者におすすめの資産運用

投資初心者なら、銀行やネット証券などで気軽に買える「投資信託」がおすすめです。投資信託は何千本とありますが、その中から失敗する可能性を減らすポイントを紹介しておきます。

流行りものに投資しているファンドは避ける

特に、バイオとかITとかいった名前を冠したファンドは避けるのがおすすめ。いっとき値上がりしても、ほとんどの場合、その流行が終わる頃には損してしまうことが多いからです。

コストを比べる

たとえば中国株に投資したいと思ったとき、ネットで検索するだけでも、似たようなファンドがいくつもあるのが分かります。それらをリストアップした上で、売買するときの手数料や信託報酬を見比べてみましょう。ひと手間かかりますが、固定費を減らしておくのは大事ですから、ぜひやってみてください。

基準価額(投資信託の時価評価)が、長期的に上がり続けていること

コストが安かろうと、運用がうまくいかないファンドを買っても仕方ありません。基準価額はチェックしましょう。

分配金が出ないか、出ても年1回程度のものを選ぶ

せっかく運用に資金を充てたなら、いちいち利益を手元に戻されるよりは、運用に回してもらった方が効率が良いです。

初心者がある程度経験を積んだときにおすすめしたい資産運用

ずばり、「株の長期保有」がおすすめです。「株で資産づくり」というと、株価が買った時より値上がりするのを期待するものと思われがちです。それも間違いではないのですが、もう一つの魅力として、配当金の利回り(株価に対する配当金の割合)の高さがあります。 具体的な数字を見てみましょう。

2016年8月16日時点で、都市銀行やゆうちょ銀行の5年定期は0.010%、ネット銀行でもトップのSBJ銀行で0.300%です。

それに対し、東京証券取引所の一部上場銘柄の平均利回りは2.20%で、年々上昇が続いています。個別の企業で言うと、日産自動車の配当利回りは4.79%、都市銀行の三井住友フィナンシャルグループで4.39%となっています。

もちろん株価の上下動はありますが、長い目で見ると結構な収入になります。

たとえば、三井住友フィナンシャルグループの株を100株、2013年の4月に35万円前後で買って2017年3月末まで持っていたとすると、2013年度から毎年12,000円〜15,000円ずつ受け取れるため、総額は68,000円(税抜)にもなります。銀行預金で、これだけの利息を受け取ろうとすると、もっともっと多額の資金が必要になってしまいますね。

もちろん、長期で配当を受け取るには、投資先の会社がずっと存続していることが前提になります。実際に投資を行う前に、会社が継続して黒字を出しているかなどの問題がないかなど、最低限のことを調べてみましょう。

資産運用は「組み合わせる」ことが大事

イギリスの格言で「卵はひとつのかごに盛るな」というものがあります。かごを落としてしまうと卵は全部割れてしまいますが、複数のかごに卵を分けておけば、かごを一つ落としてしまっても、被害は一部で済むというたとえです。

「投資する時期をずらすこと」「投資対象の分散をはかること」でリスク分散できます。デフレや円高のリスク対応として銀行預金を持ち、インフレが起きた時に資産が目減りしないように株や投資信託を合わせて持っておくといった対応をしておくのがおすすめです。

老後にいきなり資産運用を始めるより、まだ若い今のうちに運用の経験を積み始めると、将来役に立つことも多いはず。まずは少額からでも資産を増やしていけるように、ぜひ資産運用にチャレンジしてみてください。

佐藤ねむり
札幌出身、東北在住の女です。証券会社に足かけ7年ほど勤務したのち、現在は二児の子育てに明け暮れています。写真を撮ること、日本株投資が大好きです。

(提供: DAILY ANDS

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