「2、3歩下がって考える」ことで、本当の課題が見えてくる
ビジネスでは、柔軟な思考力が欠かせない。しかし、私たちは年を追うごとに特定の考え方にとらわれがちだ。では、柔軟な発想で仕事をする人々は、どのように課題と向き合い、考え、解決しているか。今、世界から注目を集めるトップデザイナー・佐藤オオキ氏にうかがった。
数字も人も会社も「ビジュアル化」して整理
プロダクトからインテリア、建築まで、多岐にわたる領域を手がけ、今最も注目を集めているデザインオフィスnendoの代表デザイナーの佐藤オオキ氏。東京とミラノを拠点としてグローバルに活躍し、クライアントも日本の大手企業から伝統工芸などの地場産業、ルイ・ヴィトンやコカ・コーラといった世界のトップブランドまで多種多様。現在は400近い案件を抱えているという。企業の抱える課題を解決し、ときにはビジネスそのものを大きく変えてしまうほどの思考は、どのように生み出されているのだろうか。
「僕は何事もまず、ビジュアル化するようにしています。数字やデータでも、人の考え方や性格でも、何でも視覚情報に還元するのです。しかもそれを、できるだけ色々なバリエーションで視覚化できないかと考えます。
たとえば、クライアント企業の方にお会いして話を聞いたら、『この会社は何色にたとえられるだろう?』『材質にたとえるなら、木かな、それとも鉄かな?』といったことを考えます。こうして情報をビジュアル化したものを頭の中から切り取って、どんどん並べていく感じです。
何でも情報をビジュアル化するのは、昔からのクセ。中学生の頃は、数学を勉強するときも、まるでアニメーションのように数式をビジュアル化していました。方程式を使って計算するときは、頭の中で魚の群れをイメージするのです。こっちの群れがあっちの群れを食べてしまったり、片方の群れがもう片方を囲い込んだり、網にかかってしまったり。そうするうちに、頭の中が整理されていきます」