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(写真=PIXTA)

夢のマイホーム購入は、人生の中でもビッグイベントの1つである。大きなイベントであるがゆえに、家の購入を考えるとき、多くの場合はまだその経験が少なく、家の買い方をしっかり理解している人は周りにもそう多くはない。しかし、住宅購入となれば、住宅ローンでシミュレーションをすれば良いわけではなく、必要な金額をどう用意し、どう返済していくのかという資金計画を立てることが重要である。

住宅の広告には、簡単な資金計画の一例がよく掲載されている。「月々○万円から」という記載をみると、このぐらいなら返済できそうだと思うかもしれないが、そのシミュレーションには隠れた支払いがあるため注意が必要だ。自分が用意できる頭金を含め、住宅ローンを利用した場合にどのぐらいの金額の住宅を購入できるのかを調べた上で、実際の支払いをシミュレーションするのがよいだろう。


住宅ローンの支払いをシミュレーションしてみよう

住宅ローンのシミュレーションを行うには、Webサイトのサービスを利用するのが簡単だ。住宅ローンのシミュレーションは、各金融機関のホームページで提供されていることが多い。例えば、住宅保証機構の「住宅ローンシミュレーション」では、返済額の試算、借り入れ可能額の試算、繰り上げ返済の試算、金利の違いによる返済プランの試算、複数ローンの組み合わせ試算、住宅取得諸費用の試算など、住宅ローンに関する多くの金額の試算が可能だ。

実際に試算してみよう。3000万円を借り入れ、元利均等、返済期間を35年とする。1年目から20年目は金利0.95%、21年目から35年目の金利を1.06%とし、ボーナス返済はなし、固定金利という条件で試算してみると、月々の支払いは20年目まで8万3988円、21年目以降が8万4669円となる。

次に、他の金融機関からの借り入れを想定し、同じ3000万円の借り入れで1年〜20年までは金利1.17%、21年〜35年の金利を1.28%として計算すると、1年〜20年の返済は毎月8万7083円、21年〜35年の返済は毎月8万7785円となる。先の試算と比較すると、毎月の返済額の差は約3000円ほどだが、返済総額の差額は130万円ほどになる。このように、金利の違いによって返済額がどうなるのかを簡単に比較することが可能だ。

繰り上げ返済のシミュレーション

前述の住宅ローンシミュレーションでは、繰り上げ返済も簡単に試算できる。繰り上げ返済とは、余剰資金ができたときにそのお金を住宅ローンの返済に充てることで、予定よりも前倒しで返済することだ。繰り上げ返済には、期間を縮める「期間短縮方式」と支払額を減らす「再計算方式」がある。どちらを選ぶべきかはそのときの状況によって異なる。

例えば、3000万円の借り入れで返済期間は35年、20年目までの金利は2.5%、21年目以降の金利を2.7%、ボーナス返済はなしとする。この場合、月々の支払いは20年目までは10万7248円、21年目以降は10万8769円で、支払い総額は4531万7962円である。

ここで、3年後に300万円を繰り上げ返済するという条件で試算すると、期間短縮方式では支払い総額が4186万7638万円となり、約345万円も利息を軽減することができる計算になる。返済期間も5年弱短縮可能だ。

再計算方式の場合は、10万7248円であった毎月の支払い額が9万5891円となり、1万1357円安くすることができる。トータルでは約139万円の利息を軽減可能だ。再計算方式は、減額できる支払い額は少ないが、毎月の支払いを1万円ほど軽減できるので、月々の支払いをおさえたい場合はこちらを選ぶとよいだろう。

借り換え返済のシミュレーション

住宅ローンは一度借り入れをしたら完済までそのままでいいわけではなく、定期的に見直すことで、その時点で最善のプランになるようにメンテナンスする必要がある。そのメンテナンス方法の一つとして、「借り換え」というものがある。

借り換えとは、今の住居に住み続けることを条件に、現在より有利な条件の住宅ローンに変更することだ。同じ金融機関で借り換えをすることはできないので、他の金融機関の住宅ローンに変更することになる。

他の金融機関で新たに借り入れをするので、最初に住宅ローンを申し込んだときと同じように、保証料や事務手数料などの諸費用が必要となる。この手数料が50万円から80万円程度かかることもあるので、注意が必要だ。

住宅ローン借り換えのシミュレーションも、各金融機関のWebサイトで行うことができる。例えば、借り入れ残高が2800万円で、残りの借り入れ期間が31年、金利2.2%の住宅ローンで借り入れを行っており、毎月の支払いは10万3896円、返済総額は3864万9492円である。

これを、金利が0.9%、それ以外の条件は同じ住宅ローンに借り換えた場合、毎月の支払いは8万6284円、返済総額は3209万7627円になる。その差は、毎月の返済額が1万7612円、総支払い差額では約655万円だ。ここから諸費用の80万円分を引いても、およそ575万円の削減ができたことになる。

住宅ローンの意外な落とし穴

ここまで、いくつかのシミュレーションを行ってきたが、実際の住宅ローンでは発生する事務手数料や保証料がシミュレーション上では反映されていないことが多い。住宅ローンを申し込む際に必ず発生する費用であり、事前に考慮しておかないと実際の契約をするときに思わぬ出費となることだろう。

また、これらの諸費用は金融機関によってまちまちだ。住宅ローンを選ぶにあたっては金利に目がいきがちだが、この諸費用が高いところや安いところ、その他の特典など、金利以外にもさまざまな要素が支払いに影響する。金利だけに目を止めず、その他の費用も含めた上で自分に適した住宅ローンを選ぶことが大切だ。

借り換えは金融期間を変更しなければならないが、現在の金融機関で条件を変更する場合は諸費用を払う必要がない。借り換えが可能であるかを調べつつ、現在の金融機関に相談するのも一つの方法だ。

シミュレーションどおりにすべてがうまくいくわけではないが、しっかりと確認しておくことで、住宅ローンの借り入れから数年後の繰り上げ返済、借り換えなど、より良い条件を金融機関から引き出すことができる。金利の0.5%や1%の違いはわずかなものに思えるが、数十年にわたって影響するもので、結果としては数百万円の違いが生じることがシミュレーションからわかるだろう。

住宅ローンを借り入れしたのであれば、毎日のように金利をチェックする必要はないかもしれないが、数年後に金利が上がるのか下がるのかといったことを頭の隅におきながら生活していきたい。