富裕層,国税庁,監視強化,海外移住
(写真=Thinkstock/Getty Images)

国税庁が発表した「国際戦略トータルプラン」には、狙いとして超富裕層の監視強化があるされる。プランの概要とポイントを解説しよう。

国外転出時課税への対応が始まった

まず概要からだ。国外送金等調書は、国外への送金及び国外から受領した送金の金額が100万円を超えるものについて、金融機関 が送金者及び受領者の氏名、取引金額及び取引年月日等を記載・提出するものである。

5000万円超の国外財産(預金、有価証券や不動産など)を持っている場合、財産の種類及び価額などを記載して提出しなければならない。正当な理由がない不提出や虚偽記載には、罰則が適用される(2015年1月以降提出分)。

これは国内においても財産債務調書を提出する必要がある。所得金額2000万円超かつ3億円以上の財産(預金、有価証券や不動産など)、または1億円以上の有価証券などを持っている場合、財産の種類及び価額等を記載及び提出するものである(2016年1月施行)。申告漏れがあった場合、加算税などが課される。これにより財産の把握ができ富裕層の特定を図ることができるのだ。

また国外財産調書の活用により国外転出時課税への対応が始まったといえる。

国境を越えた人の動きに係る租税回避を防止する観点から、2015年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこと)をする一定の居住者が「1億円以上の有価証券など」を所有等している場合には、その資産の含み益に所得税が課税される。これにより、課税逃れのための国外転出を防ぐことができるのだ。

租税条約等に基づく情報交換や多国籍企業情報の報告制度の創設

近年、個人投資家の海外投資や企業の海外取引が増加するなど、経済社会がますます国際化している。

いわゆる「パナマ文書」が公開されたし、 BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しのほか、国外で設立した法人や各国の税制・租税条約の違いを利用して税負担を軽減するといった国際的な租税回避行為が行われているが、これらに対して国民の関心が大きく高まっている。

こうした中で、租税条約等に基づく情報交換や多国籍企業情報の報告制度の創設もされた。非居住者の世界的に情報連携がとれることにより、国内源泉所得なども把握できるようになる。

たとえば日本国内の不動産を譲渡したことで所得が生じた場合、非居住者であっても、 日本で確定申告をする必要がある。不動産所得が多い、近年の状況を考えると、確定申告漏れを防ぐ必要があるためだ。

なぜ今回監視強化したと考えられるかといえば、富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しや、国際的な租税回避行為に適切に対処するためである。

有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な「富裕層」に対して、的確な管理が行われるよう、税務署の個人課税部門と資産課税部門が連携を図り、所得税だけではなく、相続及び贈与税に関する各種資料情報の収集等を効率的に実施するためだ。

富裕層については、生前贈与や主宰する法人との取引等を含めた多角的な観点を踏まえた対応が求められるため、このように世界的そして、国内でも強化するに至ったのである。

海外預金は税務署に把握されないという考えは捨てる必要がある

国外送金等調書などの資料情報や、租税条約に基づく情報交換を活用することで、どういう影響があるのだろうか。

非居住者の国内不動産の譲渡所得が把握されるほか、意図的な国外財産調書未提出者の海外資産も把握されるだろう。相続財産から除外していた海外預金もそうだ。多額の資産を有する富裕層とその親族及び関係法人は、取引の全ぼうが知られる考えたほうが良い。海外預金は税務署に把握されないという考えは、捨てる必要がある。

海外の株式譲渡に係る受贈益を意図的に逃れるために、国外財産調書を提出していなかった事例もあるが、重加算税の対象となり余計な税金は発生することになるので注意すべきである。

そグローバルな企業としての影響としては、租税条約に基づく情報交換制度を積極的に活用し、真実の取引実態を把握、タックスヘイブンに他人名義で設立した法人の実態を把握がされると考えたほうが良い。

外国子会社合算税制の適用を逃れることを防ぐためである。このような、国際的な課税逃れを防ぐためにも国税庁は国際戦略トータルプランを打ち出したのである。

眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表) この筆者の記事一覧

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