節税,扶養控除,扶養親族
(写真=PIXTA)

2016年も、まもなく年の瀬を迎えようとしている。企業に勤める多くのビジネスパーソンにとって、ボーナスが待ち遠しい時期にもなってきただろう。一方で、年末といえば定番なのが「年末調整」だ。いうまでもないだろうが、年末調整とはその年の収入を整理し、所得税等を正しく調整するために必要な手続きである。年末調整はやや手間のかかる作業であるから、必要最低限の申告で済ませている、という方も案外多いのではなかろうか。

しかし、多少面倒でも、年末調整においては、保険料控除や医療費控除などの控除制度を正しく申請することで、所得税等の還付を漏れなく受けることが重要だ。そして、身近な制度でありながらも、申請漏れが多いのが「扶養控除」である。

今回は、適用を受けられるにもかかわらず、意外と見逃すことも少なくない「扶養控除」の概要と、その適用条件等について解説していこう。


扶養控除とは?

扶養控除とは、一定の「控除対象扶養親族」がいる場合に適用を受けられる所得控除のことである。控除によって所得が小さくなれば、当然所得税も低く抑えることができる。

親族にかかる控除として最も広く認知されているのは、おそらく「配偶者(特別)控除」だろう。

特に、妻もしくは夫が専業主婦(主夫)である方ならば申告していない方はほぼいないと思われる。一方、扶養控除は、場合によっては配偶者控除よりもさらに大きな控除を受けられる制度にも関わらず、意外と理解が広まっていない。みすみす損をしないためにも、制度を正しく把握しておくことが重要といえる。

扶養控除の対象は?

まず、所得税法上の「扶養親族」とは、以下の要件を満たす方だ。

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2) 納税者と生計を一にしていること。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。

(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと

そして、(1)~(4)の条件を満たす人のうち「その年12月31日現在の年齢が16歳以上である」方のみが、控除対象扶養親族となる。

条件を字面で起こすといかにも大仰な条件のように思われる。しかし、よくよく読むと、まず6親等以内の血族及び3親等内の姻族、という点で、相当に範囲が広いことが理解いただけるだろう。(4)も一見とっつきずらい条件だが、端的に言って自ら商売を展開して利益を得ているとNG、ということだ。かみ砕けば、意外とハードルは低いことがお分かりいただけるはずだ。

そして、この5つを満たす「控除対象扶養親族」がいる場合は、年齢区分に応じて異なる額の所得控除を受けることができる。控除額は38万円から63万円だ。

最も大きい63万円の控除対象となる親族は、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人である(特定扶養親族という)。これは、子どもが大学へ進学し、親の財布にかかる教育費が最もかさむ時期の負担軽減を狙った設定であるとされている。

また、70歳以上の両親もしくは祖父母と同居している場合は「同居老親等」とされ、58万円の控除をうけることができる。

節税対策のために扶養控除をうまく利用するには

節税対策として扶養控除を利用するためにポイントとなるのは、何よりも「扶養に入れられる親族を正しく把握すること」に他ならない。ここで重要なのが、扶養親族は「同居」が要件となって“いない”点である。例えば、別居の親でも、毎月仕送りをしたりしているような場合は、扶養に入れることができるのだ。思い当たる親族が周囲にいないか、ぜひ頭を巡らせてみよう。

注意したい点

扶養控除を受けるうえで注意したい点は、知らず知らずのうちに対象親族が扶養から外れてしまうことだ。ここで、もう一度扶養控除の条件を確認してみよう。重要なのは、

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。

という点だ。所得が年間38万円とは、額面の収入としては103万円となる。1か月ごとにならすと大体8万5千円強だ。特に控除額が大きい特定扶養親族の方々は、ほとんどが大学生で、アルバイトなどにも精を出すころだろう。しかし、「うっかり」働きすぎてしまうと、ご両親の扶養枠を外れてしまいかねない。

例えば大学生の方で、これからアルバイトを始めようという方がいる場合は、「どの程度働くのがベストか」をあらかじめご両親と相談しておくのがよいだろう。

今回は、知っているようで知らない「扶養控除」枠について解説した。扶養控除は住宅ローン控除などの「税額控除」ではなく「所得控除」であることから、それ単体で単年度の税額を大きく減らすことは難しい。しかし、毎年毎年正しく申告することで、ちりも積もれば山となり、最終的には大きな節税効果を見込むことができる。

今回の記事を参考にしていただき、ぜひ扶養控除の申請漏れがないよう、年末調整に備えていただきたい。