電通,広告代理店,ブラック企業,強制捜査
(画像=Webサイトより)

電通 <4324> の時間外労働・労働基準法違反の問題は、ついに強制捜査にまで発展した。以前から労基局から是正勧告を受けていたにも関わらず改善してこなかった電通は、支配してきたはずのメディアからブラック企業のレッテルを貼られてしまった。

時間外労働を見過ごしてきた点は批判されるべきだが、このような労働環境は、広告関連業界ではいまだに、まん延している。

過労自殺した女性社員がデジタル関連業務についていたため、この事件では電通のデジタル業務のハードワークに注目が集まっているが、大きくとらえればこの事件の本質は依然として広告業界が労働集約型、人海戦術型であるという構造の問題であることだ。さらに今回の事件はこれにパワハラが加わっていた。

広告代理店のリアルな労働環境は?

最近の広告代理店でも年俸制が多く導入されており、基本的には残業代が含まれない。そのため、残業代がかからない社員に多くの業務を担当させる傾向がある。担当業務に支障がなければ勤務時間に縛りがないことが基本で、結果として際限のない時間外労働につながっている。

また勤務時間も、短時間で業務を処理することが自分の評価に直結するため、超過勤務時間を実際よりも短く記録してしまう。上司も部下が超過勤務をしていると労務管理能力を問われ、残業代が発生する社員であれば、人件費を抑えるために残業時間を少なく申請するように圧力をかけることは容易に想像できよう。

「退社時間を早くせよ」というのは簡単だが、それを実現させる会社としての仕組みは構築されないままだ。この業界は、仕事の持ち帰りや休日出勤は当たり前の世界であり、仕事のできる熱心な社員としての証になったりさえする。

典型的なコミッション制の弊害?

このような状況を生んでいるひとつの理由として、広告主との契約がコミッション制であることが考えられる。コミッション制は成果物に対する対価であるため、それにかかった労働時間・業務量は関係がない。

そのため概して労働時間は超過する場合がほとんどというのが実情だ。電通は基本的にはコミッション制を採用することが多く、労働時間の超過分は高いコミッションや広告主の業務を丸ごと受注することなどで全体での利益を確保しようとするのが基本スタンスだ。

フィー制という対応策

これに対してほかの広告代理店では、業務やプロジェクトにかかるスタッフの労働時間をもとに費用を請求する、フィー制での取引に移行する動きがある。

総合広告代理店の業務範囲は、媒体取引から広告制作、プロモーションやイベントなど多岐に渡るが、これら業務の種類ごと工数がことなるため、フィーも業務ごとに設定するなどの工夫がなされている。

広告主にとっては請求される費用の透明性が増す(ように見える)ため、電通に対抗する施策のひとつとなっている。だがフィー制で労働時間や工数が適正に管理・運用されるとすれば、労働環境の改善策のひとつにもなるといえる。もちろん、フィー制でも実際の労働時間が過小申請されてしまう危険性はある。だが、労働時間が費用に直結する点では、コミッション制よりも実態が反映されやすいといえるだろう。

ちなみに、フィー制が広く採用されている海外の広告代理店は日本と同じぐらいに、場合によっては日本以上によく働く。ハードワークであることに変わりないのだが、労働時間に見合った費用の請求がなされるし、労働時間が変われば、その都度再度見積もりと合意がなされる。

広告主の能力も試される

広告業務を広告代理店に丸投げしてしまう広告主にも課題がある。すべての業務を広告代理店に依頼せず自社でコントロールすればノウハウを蓄積でき、広告代理店とまっとうに取引できるだろう。丸投げは楽なようで、実は最も損をする取引なのだ。

特に広告テクノロジーが進んでいるいま、広告主の能力も試されているのだと自覚すべきだ。

マニュアルから自動化へ

アナログな業務を可能な限り減らすこともこれからは必須だ。現在マニュアルでなければできないと思われている業務も、自動化・省力化できる余地はある。

例えば、データ処理や取引の自動化、AIを活用した分析やプランニングなどだ。テクノロジーを積極的に導入することで労働集約型・人海戦術型から脱却し、より利益を生むリエイティブな業務にヒューマンリソースを活かすことができるだろう。

これは構造改革であると同時に、より利益を得るための戦略なのだ。現在そのようなテクノロジーがなければ、いち早くそのようなテクノロジーを開発した者が先行者利益を得られだろう。

今回の事件で女子社員は、デジタル広告の出稿データはデジタルであるにも関わらず、わざわざそれを出力して手でエクセルに入力してレポートを作成していたという。デジタルデータをアナログな方法で処理していたという、まったく笑えない話だ。

今回の事件は、立派な本社ビルや先端を行くようなカタカナの肩書き、業界をリードしていたと思われていた電通が、いまだにアナログな人海戦術でビジネスを成り立たせているという内情を明かした。このような構造的な問題は電通に限らず、この業界にまん延し、いまだに解決されていない。

逆に言えば、この問題に対処しようとする会社には次の時代のチャンスがある。(戸神雷太、広告業界出身のコンサルタント)

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