「2017年、スイスでは金融機関の合併件数が増える」との見解を、クレディスイスが示している。世界的な金融規制強化、コスト上昇などが財政面で大きな負担となり、特に小規模なプライベート・バンクを圧迫している。スイスではその傾向が非常に強く、長期的な収益性に多大な影響をおよぼしている。

PwCからも「2015年から2020年にかけて、スイスの銀行数が136社から100社以下に減る」とのレポートが発表された。

規制強化、コスト上昇で小規模銀行が苦戦

11月8日、クレディスイス投資部門責任者、マルコ・イリー氏は、「運用資産総額が200億スイスフラン(約2兆1255億円)を下回る企業が苦戦を強いられている」とし、中でもウェルス・マネージメント、リテール・バンキング部門が縮小の危機にひんしている現状を指摘した。

今年2月にスイスの大手プライベート・バンク、EFGインターナショナルが10億6000万スイスフラン(約1126億5021万円)で、プライベートバンキング子会社BSIをブラジルの大手投資銀行BTGパクチュアルから買収。スイス国内で5番目の規模を誇る、大型ウェルス・マネージメント会社の誕生となった。

イリー氏はこの買収劇が新たな事業モデルとなり、経営管理部門および事務管理部門の業務の効率化が図れるのではないかとの新たな方向性を見だしている。

また中国の国有化学メーカー、ケム・チャイナ(中国化工集団)がスイスの大手農薬メーカー、シンジェンタを430億ドル(約4兆5698億円)で買収した件を最近の例に挙げ、中国企業によるスイスでのインバウンド取引も来年にかけて継続すると予想。アウトバウンド取引は増加するという。

スイスの内国市場が小規模であることを理由に、スイス企業が健全な財務内容を武器に成長を遂げるカギは、海外企業(特に米・アジア地域)が握っているとの見解だ。

ティージャン・ティアムCEOからは、クレディスイスのプライベート・バンキング部門の一部などを含むスイス・ユニバーサルバンク(商業業務と投資業務の双方を行うことが認められている金融機関)の20%から30%の株を、来年末までに上場させるとの計画が順調に進んでいることが発表されている。

40億スイスフラン(約4254億9686万円)の資金調達を狙っており、実現すれば来年最大規模のIPOになると期待されている。今年は上場がわずか3件にとどまったスイス。イリー氏は来年上場の可能性がある企業数は5件から6件に増えると予想しており、医療やバイオテク分野に未来を見だしている。スイスが新たな戦略で勢力挽回となるか、今後の動きに注目したい。(ZUU online 編集部)

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