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(写真=PIXTA)

民間保険会社が販売している火災保険は、火災や台風、洪水による損害を補償できるが、地震による損害は対象外だ。地震、それに伴う津波といった自然災害を補償するには地震保険に加入する必要がある。

地震保険は国が提供する保険であり、民間の火災保険にセットして加入ができる。都道府県ごとに料率が決まっており、建物の構造によっても保険料は変動する。いざというときに備える地震保険の必要性を紹介する。


地震保険の必要性

日本は地震大国であり、阪神淡路大震災、東日本大震災など甚大な被害をもたらした大規模地震が発生している。被害に遭うと住む場所を失い、職も失い、今まで築き上げてきた資産を一瞬にして失いかねない。

そういった地震が発生した際、被害の程度に応じて保険金を受け取れる地震保険は、経済面で地震に備える唯一の方法とも言えるだろう。必要性は言うまでもなく高く、加入の有無によっては被災者の今後の人生を大きく左右すると言っても過言ではない。

地震保険の需要や加入率

地震保険は日本国内でどの程度需要があるのか、日本損害保険協会が行った統計を見てみよう。

地震保険の火災保険付帯率
2001年 33.5%
2006年 41.7%
2011年 53.7%
2012年 56.5%
2013年 58.1%
2014年 59.3%
2015年 60.2%

2011年に発生した東日本大震災より、付帯率が急激に上昇している。2001年から2015年の14年間で、付帯率はほぼ倍になっており、地震保険への関心が高まっていることが分かる。都道府県別で最も高いのは宮城県の86.2%と、震災の影響を強く受けている。

逆に最も低い県は長崎県の39.2%であるが、今年発生した熊本地震の影響で今後は上昇する可能性がある。総じて日本国内で地震保険の需要は高まっていると言える。

地震保険の補償内容

火災保険は建物および家財に掛けることが可能だ。事故が起き損害が発生した場合の修理費や、全損の場合は再度立て直す費用や購入する費用が保険金として支払われる。実際に発生した損害以上に保険金は受け取れないため、保険金で利益を得ることはできない仕組みとなっている。

地震保険は火災保険で設定した保険金額のうち、最大50%までを補償することができる。補償内容は地震・津波・噴火によって損害を受けた際に支払われる。火災保険と違い損害の程度は3段階(全損、半損、一部損)であり、それぞれ保険金額の100%、50%、5%が支払われる。

例えば、3000万円の建物に対し50%の地震保険を掛けていた場合には、損害の程度に応じ以下の保険金が支払われる。

損害の程度 保険金
全損(建物損害が時価の50%以上) 1500万円
半損(建物損害が時価の20%以上50%未満) 750万円
一部損(建物損害が時価の3%以上20%未満) 75万円
無責(建物損害が時価の3%未満) 0円

損害程度の判別は、保険会社から派遣される鑑定人が厳密に鑑定を行う。保険会社にとって地震災害が発生した際は、迅速な保険金支払いが求められるため、被災地には各社の鑑定人が集まり、順次鑑定を行っていく、という流れとなる。

また、2017年1月より地震保険の改定が行われ、保険金支払いの仕組みに変更が加えられる。具体的には半損が大半損(建物損害が時価の40%以上50%未満、60%支払い)と小半損(建物損害が時価の20%以上40%未満、30%支払い)に細分化される。

都道府県ごとの料率も改定となり、全体的に保険料は上昇することとなる。今後の地震リスクに備えるには現行の保険料では不足するとの見通しがなされたためである。

地震保険が有効な地域

地震保険が有効な地域は、やはり津波リスクのある海沿いの都道府県であろう。地震保険の保険金支払額を以下に示す。

震災 保険金支払額
2011年東日本大震災 1兆3113億円
2016年熊本地震 3621憶円
1995年阪神淡路大震災 783億円

東日本大震災の被害は多くが津波によるものであり、支払保険金の額を見れば歴然である。万一に備え地震保険に加入する必要性は十二分にあると考えられる。また、地震調査研究推進本部が発表している地震の発生確率を参考にするのも有効である。

今後発生が懸念されている南海トラフ地震の範囲である東海地方など、太平洋側に位置する都道府県は注意が必要である。とはいえ東日本大震災も熊本地震も、事前予測ができたかと言われれば難しく、日本という国に住む以上、地震による被災は覚悟する必要がある。