米ゼネラルモーターズ(GM)が来年1月、オハイオ州およびミシガン州の工場で2000人の大型解雇を実施すると発表した。「米国におけるシボレー売上低迷を受けての決断」とされているが、次世代型シボレーの生産基盤をメキシコに移すなど、コスト削減策に拍車がかかっていることは疑う余地がない。

以前から米自動車メーカーの海外依存を猛烈に批判していたトランプ氏が米大統領に就任した今、高関税を含めたあらゆる圧力を覚悟しての動きである。

GM「リストラと新政権誕生に関連性なし」

昨年末のデータでは米国内で9万7000人を雇用していたGM。ほかの部門への移動が決定したごく一部の従業員をのぞいて、シボレーの組み立て作業を行っているローズダウン工場で1200人、シボレー・カマロ、キャデラックATS、CTSを生産しているグランドリバー工場で800人が、来年1月以降は職を失うことになる。

今回のリストラ発表で最大の焦点が当たっているのは、新政権との衝突だ。もはや憎悪の域に達しているとしか思えないメキシコに対する反発心を、トランプ氏は選挙運動中からあらわにしていた。

コスト削減を理由にメキシコに生産基盤を築くという方針を打ち出した各自動車メーカーに対し、「米国人の乗る車は国内で生産しろ」と、当選のあかつきには「メキシコ産自動車税」として、35%の関税を導入する意向を示していた。

GMは2012年、2億2000万ドル(約234億8280万円)を投じて、同社の人気小型セダン「シボレー・クルーズ」をオハイオ州のローズダウン工場とパルマ工場で開始すると発表。しかし2015年にはいると新たに3億5000万ドル(約373億5900万円)を出資し、メキシコのコアライラ州ラモス・アリスぺエ工場に生産基盤を移行させた。2014年に決定した、総額50億ドル(約533億7000万円)のメキシコ工場投資計画の一環である。

こうした動きを「米国からの雇用流出」「米経済を押しさげる原因」と見なすトランプ大統領にとって、今回の大量リストラが格好の標的となることは明白だ。GMは米選挙後、新政権とともに「力強さと競争力を備えた、米製造産業基盤を後押しする政策への取り組むことを楽しみにしている」と前向きなコメントを発表。「人員削減と米大統領選の結果は無関係」であるとし、「それらの懸念を見こし、あえて選挙後までリストラの公表をひかえた」と主張している。

独デュースブルク・エッセン大学の自動車リサーチセンター「CAR」のディレクター、フェルディナンド・ドゥーデンホッファー教授は、トランプ政権が貿易障壁を築く方針であると指摘。「自動車産業が黄金の郷と見なしてきたメキシコは、苦境におちいる可能性がある」との見解を示した。

そして同様の苦境は自動車メーカーにも訪れる可能性が高い。GMやフォードに代表される米メーカーだけではなく、ドイツや日本のメーカーにとってもトランプ政権の圧力が懸念される。自動車産業にとって大きな打撃となりかねない危機的状況を、これらのメーカーはどのように乗り越えていくのだろう。(ZUU online 編集部)

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