マガジン,週刊漫画誌,マガジンプラス
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『GTO』『はじめの一歩』『金田一少年の事件簿』など数々のヒット漫画を連載してきた週刊少年マガジン。毎週水曜日の販売日を楽しみにしている読者も多いだろうが、2016年7‐9月の印刷部数が99万5017部と100万部を割り込んだ。若者の活字離れ、出版不況が叫ばれるなか、サブカルチャーを生み出してきた週刊漫画誌は今後どうなっていくのだろうか。

週刊漫画誌は軒並み発行部数減 10年で4分の1に

日本雑誌協会によると、講談社が発行する週刊少年マガジンは、16年4‐6月の印刷部数は101万5659部だったが、一気に2万部近く部数が落ち込み大台を割り込んだ。400万部を超える印刷部数を誇っていた1997‐98年からわずか10年弱の期間で、印刷部数が4分の1まで減少したことになる。週刊漫画誌を巡る印刷部数の減少は、週刊少年マガジンに限った話ではない。

集英社発行の「週刊少年ジャンプ」は、7-9月印刷部数は215万1667部と、4-6月から約1万7000部減少した。また、小学館発行の「週刊少年サンデー」も、同33万部と前期から約4万部も落ち込み、主要週刊漫画誌の紙媒体での印刷部数は軒並み減少傾向にある。

これまで、週刊漫画誌の発売日には、電車の中で分厚い雑誌を両手で広げ、狭い車内でページをめくる読者の姿があちらこちらで目にすることができたが、今はその光景は珍しいものとなり、乗客の多くは雑誌に代わりスマートフォンに目を向けている。しかし、デジタル技術の発展に、出版業界も手をこまねいているわけではない。

新たな世代のファン獲得へ 「アプリシフト」の波

週刊少年マガジンは、公式アプリケーションの「マガジンポケット」の配信を2015年7月にスタート。

このアプリでは、『FAIRY TAIL』『ダイヤのA』『ベイビーステップ』など週刊少年マガジンで連載中の人気漫画に加え、別冊少年マガジンの作品が毎日無料で楽しめるという。有料で閲覧が可能となる作品もあるが、例えば『BLOODY MONDAY(ブラッディマンデイ)』を10月末から11月中旬の2週間限定で無料公開するなど、アプリならではの配信サービスを展開している。

紙の雑誌で発行する際、編集部がオススメする作品を、巻頭カラーやセンターカラーを施し、色彩をつけることで他の連載作品より目立たせ、目を引く工夫を凝らしているが、アプリでは別の手法でアプローチを仕掛ける。

イチオシの作品を無料で公開し、アプリユーザーがそれを読むとポイントを付与するサービスがある。このポイントは、有料作品の購入にも使うことができ、無料公開でサービスを利用するきっかけを作り出し、ポイント制度の導入で、アプリの利用の拡大を狙う。また、デジタルコンテンツならではの機能として、読者同士が作品について意見を交換できるプラットフォームも整備するなど、機能の充実を図る。

マガジンポケットは、昨夏のリリースからすでに100万ダウンロードを達成。週間のユーザー数は20万人前後に上るという。アプリの利用者は10代、20代の若者が中心で、これまで週刊少年マガジンの雑誌を購読してこなかった世代の取り込みに一定の成果を上げている。全盛期には、400万部を誇った印刷部数を考慮すると、紙媒体の部数が落ち込む中、アプリの週間ユーザー数を今後どこまで伸ばすが喫緊の課題となっている。

ライバル誌もアプリシフトを進める

ライバルの週刊漫画誌もアプリへのシフトを進めている。週刊少年ジャンプは、2014年9月に漫画アプリ「少年ジャンプ+」を公開。少年ジャンプ電子版の有料販売と、無料のオリジナル漫画を主にアプリで展開している。アプリのダウンロード数は550万を超え、週間のユーザー数は140万人に上るという。少年ジャンプの電子版は当初300円と紙媒体より高い値段設定だったが、その後250円に値段を下げたことも奏功し、電子版の購読者数は増加傾向にある。

また、少年ジャンプ+では、過去の人気連載漫画を無料で公開しているが、人気漫画の遺産に依存するだけにとどまらない。デジタルコンテンツからヒット作品を生み出し、『ファイアパンチ』などが注目を集める作品を世に送り出している。アプリ内で発表した漫画がヒットを飛ばすことで、週刊少年ジャンプへの相乗効果を図る。

この2社に遅れること今年7月、週刊少年サンデーもついに電子版の配信をスタートさせ、週刊漫画誌の3強のデジタル版が出揃った。『名探偵コナン』など各人気作品に「試し読み」モードを設定し、読者が立ち読み感覚で、ストーリーを少し読み進めてから購読できるようなコンテンツに仕上げた。

週刊漫画誌は、紙媒体の印刷部数が落ち込む中、各雑誌のアプリを充実させる戦略にシフトしている。単に紙媒体と同じ内容が電子版で手に入れられるだけではなく、過去の人気作品が無料でダウンロードできたり、デジタルコンテンツからヒット漫画を生み出したりすることで、新たな世代のファンを増やすことができるか、週刊漫画誌の挑戦が続く。(ZUU online 編集部)

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